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ドゥカティのフロントタイヤの交換の仕方

2020/01/06
 
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mecha_blo
元・バイクの整備士→現・自動車の開発に携わっています。 70年代国産車(いわゆる旧車)専門のメカニックを経てドゥカティのディーラーで勤務。 キャブレターから最新の電子制御まで、幅広い分野の知識を持っています。 全てのバイク乗りにお役立ちの情報を公開します。

ドゥカティのフロントホイール周りの構造はちょっと特殊で、脱着するときの作業ミスが思わぬトラブルに繋がるかも?

今回はドゥカティ スポルト1000を教材にしますが、カスタム車なので現車とは異なっています。
逆にモンスターに近い構造ですが、ドゥカティとしては割と一般的な形なので参考になると思います。

例によってタイヤ自体の交換方法は割愛し、本投稿ではホイール単体での脱着手順を紹介します。

フロントホイール周りの構造


ブレーキの事を「キャリパー
タイヤを貫通して支えている長いボルトを「アクスルシャフト」、そのナットを「アクスルナット」と呼びます。

 


車体前側から見た写真。

アクスルシャフトの入る穴を締め付ける形で二本のボルトが貫通しています。
この構造には色々な理由がありますが、アクスルナットが緩んで外れてもアクスルシャフトが抜けないようにする役割もあります。
これを「アクスルホルダー」と呼びます。
殆どのバイクに共通の構造です。

 


アクスルシャフト
これがホイールを横から貫通して車体を支えています。
中身は中空構造で軽く作られています。

アクスルホルダーのボルトを締めすぎるとアクスルシャフトが潰れてしまい、抜くことができなくなってしまいます。
アクスルホルダーの締め過ぎには要注意です。

 


アクスルシャフトの合わせ位置

アクスルシャフトの太い側の先端には切り欠きが有ります。
本来は特殊工具をセットするための形状なのですが、サスペンションを調整する穴がシャフトに空いているので上の写真の位置に合わせるのが正しい向きです。
ただし、オーリンズサスペンション装着車とディアベルは切り欠きを水平向き(写真の位置から90°回す)に合わせます。
ナットにマーキングをして締め付けトルクを合わせる場合は、切り欠き部とサスペンションにマーキングをしておきましょう。

 

締め付けトルク

ボルトを締め付ける力具合を「締め付けトルク」と言います。
「トルクレンチ」という専用工具を使用して以下の数値の力で締め付けなくてはなりません。

ドゥカティの場合、アクスルシャフトナット(フロントホイールナット)の締め付けトルクは全ての車種で共通です。
ただし、使用するソケットのサイズが28mmと30mmに分かれており、アクスルシャフトの太さも異なります。

既に規定トルクで締め付けてある場合は、あらかじめボルトにマーカーペンでマーキングしておきます。
締め付けるときにマーキングの位置までボルトorナットを締めれば元のトルク値に合わせることができます。

 

使用する工具


①タイヤレバー
今回はキャリパーに使用します。
先端に丸みがあるタイプがベスト。

②棒
バイクのハンドルをカットしたもので、アクスルシャフトを叩き抜くのに使用します。
鉄以外の材質で、直径が2cm程度であれば何でも良いです。

③プラスチックハンマー
棒を叩くのに使用します。
やはり鉄以外の材質のハンマーが良いです。

④スピナーハンドルと28mmソケット
アクスルナットを回すのに使用。
車種によっては30mmソケットが必要です。
28mmソケットはサイズが特殊で、一般的なホームセンターでは買えません。
私はコーナンPROで購入しましたが、工具専門店か通販で探すと良いでしょう。

⑤12mmメガネレンチ
⑥8mmヘキサゴンレンチ
⑦6mmヘキサゴンレンチ
車種によっては必要です。

⑧マーカーペン
緩める前と同じ締め具合に合わせる為と、締め忘れ防止の意味でマーキングするのに使用します。

 

フロントホイールの外し方


アクスルナットを反時計回りに回して緩め、外します。
締め付けトルクは63N•mなので、それほど固く締まっていません。
とはいえ、車体がバランスを崩して倒れてはいけないのでサイドスタンド状態のまま緩めます。

 


左右のキャリパーのボルトを外します。


ドゥカティはブレーキキャリパーを外す時に、ホイールとキャリパーが引っかかってしまい外し難いです。


そんなときはキャリパーを内側に捻って抜きます。少し強引ですが、慎重にひねればダメージはありません。
ホイールをゴリッとやらないように気をつけて下さい。


アクスルナットとキャリパーが外れたらジャッキアップします。
私はスタンドを持っていないのでエンジンにジャッキをかけて上げましたが、メンテナンススタンドをお持ちでしたらそちらを使って下さい。


アクスルホルダーを緩めます。
左右二箇所、ボルトを計4本緩めます。


ボルトは外さなくても緩めるだけでOKです。


アクスルシャフトがフリーになるのでホイールから抜きます。
抜き難い場合は外径2cmの棒(材質鉄NG)で叩き抜きます。

ホイールが落ちますので片手でホイールを持つなどして支えてください。


ホイールが外れます。
フロントフェンダーが邪魔になる場合は素直に外しましょう。

 

ホイールを外したらアクスルシャフトの入る穴に指を入れてスムーズに回るか確認します。
ここにはベアリングという部品が入っており、「ゴリゴリ」するような感触があれば損傷している状態になります。
そのまま放置して走行すると危険なので、もし異常があれば交換をしましょう。

 

フロントホイールを取り付ける

ホイールと車体(アクスルホルダー)の間にはカラーという筒状の部品が挟まっています。
右側と左側で違うサイズ(長さ)のものが装着されているので、外した時の位置と同じように戻します。

 

フロントホイールは一見、左右対称の形をしており、どちらの向きでも装着できてしまいます。
向きがありますので気を付けましょう。
写真のように矢印の先の方向が進行方向(前側)になるように取り付けます。

 

ホイールの向きとカラーの位置に気を付けてホイールを入れます。

 

アクスルホルダーとホイールの穴の位置を合わせてからアクスルシャフトを挿入します。
入りにくい場合はタイヤを持ち上げたり、鉄以外のハンマーで叩いて入れます。

 

アクスルシャフトが通ったらアクスルナットを取り付けます。

レンチでナットを時計回りに回します。
途中で少し重くなりますが、そのまま構わず3周程度ナットを回してください。
解説
この時アクスルホルダーのボルトは締め付けず、アクスルシャフトはフリーで回る状態です。
アクスルナットをシャフトがフリーの状態で供回りさせることで、シャフトのセンター出しをする為です。

 

アクスルシャフトをクルクル回したら、先ほどマーキングした位置で止めます。

 

アクスルホルダーを締め込みます。
ボルトの直径が8mmなら20N・m。直径6mmなら10N・mです。
オーリンズサスペンションの場合は必ず19N・mで締めます。
トルクレンチが無い場合は緩める前にマーキングした位置を頼りに締めます。

 

もしトルクレンチも無くマーキングもしていない場合は、
レンチを短めに持って強めに締めればOKです。
画像はL字レンチですが、メガネレンチの場合は短めの物を使用して下さい。

片方のボルトを締めたら隣のボルトが緩みます。
①→②→③の順番で締めましょう。
4回以上締めるとオーバートルクになるので、
締めるのは片方1回、もう片方2回までです。

アクスルホルダーを左右とも締め付けたらジャッキダウンします。
タイヤが地面に着いている状態でアクスルナットを規定トルクで締め付けます。
アクスルシャフトの両端側のマーキングが合うように締め付ければ大丈夫です。

トルクレンチが無い場合は、長さ50cm程度のレンチでやや強めに締め付ければ規定トルクレンチ近辺になります。

 

ブレーキキャリパーを取り付けます。
ボルトを締めるときは写真のように上方向(前方向)にキャリパーを軽く押しながら締付けます。
トルクレンチが無い場合は長めのL字レンチで力一杯締めます。

 

キャリパーが入りにくい場合はタイヤレバーをブレーキパッドの隙間に入れて優しくこじります。
こうするとディスクローターの入る隙間が空いてキャリパーを入れやすくなります。
ピストンを戻し過ぎるとマスターシリンダーからフルードが漏れるので気を付けましょう。
もしハンドル近くに液が垂れているのが見えたらすぐに水で洗い流して下さい。
フルードの入っているブレーキマスターのタンクのキャップを外して漏れた液を拭き取るのもお忘れなく。

 

ブレーキキャリパーを取り付けたらレバーが固くなるまで何度も握ります。

 

最後にホイールを浮かせ、手で回します。
勢いよく、軽く回るようでしたらOKです。
タイヤを回す手を離した瞬間にタイヤの回転が止まってしまうようなら組み付けNGです。
もう一度、元にあったように組み直しましょう。

ホイールを脱着する上で大事なことはボルトを締めすぎないことです。
特に電動や空気圧式のインパクトレンチでガンガン締めるとベアリングが損傷し大変なことになります。

また、交換後は軽く試乗することをお勧めします。
街中を5km程度流してから再度、ボルトの締め忘れやタイヤの向きが間違っていないか点検しましょう。
そのときキャリパーを手で触ってみて火傷しそうなくらい熱ければブレーキに異常があります。

足回りの脱着を伴う整備は危険と隣り合わせです。
作業後はしつこいぐらいにチェックし、自分の作業にミスが無いか疑いましょう。

 

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