ドゥカティ ムルティストラーダ1200DVTの外装の脱着方法

整備関連

このページではドゥカティ ムルティストラーダ1200のタイミングベルトを交換するために外装を脱着する手順を説明します。

対象は可変バルブタイミング(DVT)という特殊な機構を搭載したエンジンを搭載しているモデルですが、従来の可変バルブ無し(テスタストレッタ11°)を搭載したモデルは別物になるので参考になりません。
DVT車はLツインエンジンとLEDヘッドライト、クルーズコントロールを採用していることが外観の特徴です。

DVT搭載エンジンのタイミングベルトを交換する手順はこちらのページを参考にしてください。

本手順はプロの整備士向けです。
一般の方が作業をすると重大トラブルに至るので真似をしないでください。

 

バッテリーを外す

整備を始める前にタンデムシートを鍵で外し、ライダースシートを持ち上げて外します。

外装を外す前にバッテリーを外し、不意のショートによる電装系の故障を予防します。

バッテリーを固定する黒い樹脂のステーの端側にあるボルトを外し、赤丸の部分のコネクターを外すとステーをフリーにすることができます。
ステーを固定するボルトは、ネジの座面が埋め込み式のネジ穴と固着することがあります。
ボルトのねじ山と座面にカジリ防止グリスを塗布すると良いでしょう。

!注意!
メインキー(メーターパネル)をOFFにして5分以上経過してからバッテリーの端子を外してください。
この車両は複数のコンピュータを搭載しており、キーをOFFにするとシャットダウンを開始します。
シャットダウンが完了する前にバッテリーの端子を外すと処理中のコンピュータが電源を喪失してエラーを誘発することがあります。
万が一、メーターやオドメータの表示に異常が発生した場合は各コントロールユニットを交換することになります。
シャットダウンの完了は、キーOFFにして数分後に「コトッ」という音がすることで判断できます。
不安であれば10分以上放置することでリスクを無くすことができます。

外装を外す

ハンドル後方にあるカバーを手で持ち上げて外します。
このカバーの中には非常用の起動/停止スイッチがあり、リモートキー本体や電池が切れたときでもバイクを起動することができます。
起動にはPINコード(暗証番号)が必要になります。
PINコードはメーターのメニュー画面で変更できますが、旧PINコードを入力する必要があります。
旧コードが不明な時はディーラーに依頼して診断機に接続することで解除できます。
中古車を買い取るときは前オーナーからPINコードを聞き取り、納車整備の際に新PINコードに書き換えるようにしてください。
PINコードの書き換え手順はこちらにアクセスしてオーナーズマニュアルを参照してください。

 

カバーの下にあるボルト(4本)を外してDUCATIエンブレムのあるカバーを前方に押して外します。
このカバーは外す時よりも装着するときが難しいです。
外す前に、装着状態の画像を撮って後の参考にしましょう。

画像の両サイドカバーを外します。
固定ボルトは下方向に各2本、横からは見えない位置にあります。
ボルトを外したらカバーを上方に持ち上げて外します。
グロメット固定ではないので軽い力で外せます。

先端のクチバシ下の黒いカバーを外します。
下方向に3本の固定ボルトがあります。

クチバシを固定するボルト(左右に各2本有り)を外し、ゆっくりと引き抜きます。
クチバシ全体はオイルクーラーに挟まっているように固定されています。
ドゥカティの赤いエンブレムの辺りの内部に吸気温度センサーがあるので、コネクターの爪を起こして慎重に外します。
センサーからコネクターを分離できればクチバシを外すことができるので、センサー本体を外す必要はありません。

サイドカバーのベースの黒いカバーを外します。
カバーを外すには、上方に3カ所ボルトがあるので取り外します。
下部にあるグロメット装着部の裏側にある対角24mmのナットに回り止めの工具を当てがってからボルトを緩めます。
この円盤状ナットに回り止めをするのが至難の業で理不尽さを感じます。

シート下のカバーを外します。
まず、カバーを固定するボルト3本を外し、後部を強く後方に引いてフレームに引っ掛かる部分を取り外します。
次に前方を上方に引いて固定部からリリースします。
外すときは簡単にできますが、装着するときは非常に難しいので、今の内に脱着を繰り返して練習をしておくと良いでしょう。
ここもナイス理不尽です。

最後にガソリンタンクカバーを外します。
カバーを固定するシルバーの段付きボルト(10本)を外し、ガソリンタンクキャップを固定するM5キャップボルト(6本)を外します。
タンクキャップは取り外さずにカバーに残ったままの状態で作業を進めます。

カバーの下から前方方向に伸びているホースを中間部から分離します。
ホースの片方はドレン用、もう片方はエア抜き用のホースで、この車両はタンクから揮発するガスをチャコールキャニスターに逃がす構造となります。
ガソリンタンクキャップがエレクトリックタップ(電気式ロック付きタンクキャップ)に換装されている場合は、キャップ裏から伸びているコネクターを外します。

ガソリンタンクカバーをゆっくりと後方に引きタンクから外します。
カバーに装着してあるカバー用ボルトの雌ネジプレートの端が鋭いので、タンクを傷つけないように気をつけましょう。

カバーにキャップが残っている状態で外すので、カバーが無くなるとガソリンタンクの穴が空いたままの状態になります。
異物が混入しないようにウエス等で蓋をします。
この車両はメーターにガソリンタンクの残量が表示されます。
タンク内の燃料ゲージは特殊なセンサーで構成されており、燃料消費量や走行距離、エンジン稼働時間、ガソリンの直接的な残量等の各値をコントロールユニットに保存されたアルゴリズムに従って計算した結果をゲージに表示しています。
整備で気を付けるべきことは、メインキーがOFF(メーターが起動していない状態)時に燃料を抜いたら、次にキーをONにするまでに必ず元の量の燃料を入れてください。
コントロールユニットが眠っている(電源が届いていない)間に、最後にキーONした時よりも不自然に燃料が減ると計算が合わなくなり、燃料ゲージの表示が混乱して正確な残量を表示できなくなります。
いったん混乱すると自然には元に戻らず、ディーラーにある診断機で燃料の残量の学習値をリセットする必要があります。
燃料が減った状態でキーがOFFの時に燃料を補充するのは通常のことなので問題は発生しません。

ガソリンタンクを外す

ガソリンタンク前方左側、上面にフューエルポンプのコネクターがあるので取り外します。

フューエルホースコネクターの外側、白い部分を地面方向に押し込みながらフューエルホースを引き抜きます。
ホースを取り外したら異物が混入しないように口の部分をウエスで保護します。
ホースの脱着が簡単なのはこの車両の良いところです。
ホースを装着するときは差し込み部を清掃しラバーグリスを薄く塗布すると内部のパッキンを痛めなくて済みます。

ポンプ前方にあるユニットを固定部から外します。マジックテープで装着されているので何度でも脱着可能です。
あたかも後付け部品のようにタンクに固定されていますが、全ての車両にあります。
ユニットのコネクターを外す必要はありません。

タンク後方にある左右の固定ダンパーを取り外します。
ダンパーを固定するボルトはT27トルクスで緩めます。ダンパーを外してもタンクが落ちることはありません。

タンク後方の端にある燃料レベルゲージのコネクターを外します。
コネクターは近辺の樹脂製ホルダーにタイラップで固定されています。
装着時はタイラップで固定するのを忘れないようにしましょう。

タンク前方の左右にある固定ボルトを外し、タンクを後方に引き抜きます。
タンクを保管するときは後方にある燃料レベルゲージが地面に設置しないように注意してください。
タンクキャップが無い状態なので、火気の無い風通しの良い場所で保管してください。
タンク下の布状のカバーは新車時に癖がつくように折り曲げ部をテープで固定してあります。
大抵はテープが剥がれ落ちているのでそのままでも問題ありませんが、気になるようなら装着時にテープを貼り直してください。

外装の外し方の手順は以上です。装着は逆の手順で作業してください。
各固定ボルトにあるナイロンワッシャーを紛失する事例が非常に多いです。
無くすと同じものは純正でしか手に入らないので注意してください。
雌ネジが真鍮製の埋め込みナットである場合はオーバートルクに気を付けてください。
雌ネジが鉄製の板状ナットの場合は、走行中の振動でボルトが緩み脱落することがあります。
ロックタイトを使用すると緩める時にナットが動いて外装の固定部をえぐり取ります。
外装を固定するボルトの締め付け具合は各々の信条の元、細心の注意を払ってください。

バーチカルヘッド上のタンク固定ブラケットを外す

タイミングベルトを交換するための作業なので、シリンダーヘッドカバーを外す工程に移ります。
バーチカル(垂直の意味=後ろバンクエンジン)ヘッドカバーの上にあるガソリンタンクを固定するブラケットを外します。
固定ボルトは4隅に有り、T27トルクスの木ねじ4本で固定されています。
あらかじめメインハーネスを固定するタイラップを切除し、「V EX」と記載されているバーチカルヘッド排気側カム角センサーのコネクターの固定をブラケットから外します。
ハーネスのタイラップやコネクターの固定を元通りにするため、外す前に撮影をしておいてください。
後方側の固定ボルト2本は水が溜まる構造なので頭部が錆びていることが殆どです。

エアクリーナーエレメントを清掃する

タイミングベルトを交換するときはエアクリーナーエレメントを清掃or交換する時期なので同時にエアクリーナーボックスの蓋を外す工程に移ります。

エアクリーナーボックス上にあるコントロールユニットのコネクターを外します。
コネクターの爪(ヒンジ)部を180°持ち上げることでコネクターを外すことができます。
ユニットの損傷を防ぐため、バッテリーを外してから十分に時間を経過させてから作業してください。
画像にはありませんが、メインハーネスを固定する半筒状のブラケットはあらかじめ外してあります。

エアクリーナーボックスの蓋は4隅にあるT20トルクスボルト(合計4本)で固定されています。
ボルト周辺のスペースが少なくアクセスが難しいので、ビットツールではなくT20トルクス専用のドライバーが必須です。
蓋を固定するボルトを取り外してフリーに動くようになった状態で前方にある吸気温度センサーのコネクターを外した後、蓋を外します。
コネクターを外さずに蓋を無理な力で引くとセンサーやコネクターを損傷する可能性があるので注意してください。
エアエレメントとエアクリーナーボックスの接触部(接地面)に砂が溜まっていることがあります。
インテークに異物を落下させないようにエレメントは慎重に外し、装着部周辺は念入りに清掃してください。
エレメントは乾式なので圧縮空気で清掃できます。
ペーパー式かつ、吹き返しガスが付着しにくい構造なので当分の期間は劣化しないと思われます。
余程の走行距離を使用したり損傷が無ければ再使用可能です。

ラジエターを外す

タイミングベルトを交換する時はシリンダーヘッドカバーを外す必要があるのでラジエターを取り外します。
事前にホーンを外しておくと作業がしやすくなります。
同時にオイルとフィルターを交換する場合はこの段階でエンジン下のガードパネルを外しておくと作業効率が良くなります。

まず、冷却水を抜き取ります。
いきなりラジエターホースを外して液を抜いても良いですが、左エンジンカバーのウォーターポンプ下部にあるドレンボルト→ラジエターキャップ→ホースの順に外すことで丁寧に液を抜くこともできます。
ドレンボルトはブレーキガスケットが使用できます。ドゥカティ純正のブレーキガスケットであれば外形が小さく綺麗に収まります。
ドレンボルトの締め付けトルクは、純正の銅製ガスケットを使用した場合は20N・mですが、その他のガスケットを使用した場合は適切な感触で締め付けてください。
リザーバータンクはラジエターキャップよりも上にあるのでタンクを外さずとも液が抜けます。
故に、ラジエターキャップを最初に外すとリザーバータンクの液がラジエターキャップ装着部に溢れて清掃が面倒になります。
ラジエター装着後にエア抜きをするときは最後にリザーバータンクに液を入れるようにしてください。

ラジエター本体の固定は一般的なので解説を省きます。
クーリングファンのコネクターはフレームの奥にあります。
左側のコネクターはフレームとエアクリーナーボックスの間の隙間が少なく抜けません。
コネクターを分解して小さくし、エアクリーナーボックスを反対側に押しながら引き抜きます。
製造ラインでの組み立て工程の都合でこのような不具合があるとあると思われますが、装着時は取り回しを工夫して今後は脱着しやすいようにしても良いでしょう。
配線を途中でカットしてコネクターを追加する手段もありますが、各自の良心に従って確実に作業してください。

尚、この車種を含む多くのドゥカティには冷却水経路にエア抜きバルブがありません。
液を充填するときはサイドスタンド状態でラジエターキャップが最も高い位置にし、液を満たしたらラジエターホースをマッサージしたり車体を左右に傾けるとエア抜きができます。
リザーバータンクがラジエターキャップよりも高い位置にあるので、クーリングファンを作動させた後にエンジンを冷やしたら自動的にラジエター本体へ不足分の液が補充されエア抜きが完了します。
リザーバータンクの液量が冷間時に減っていれば補充してください。

タイミングベルトカバーを外す

エンジン右側にあるタイミングベルトカバーを取り外す工程に入ります。
リアブレーキホースをフレームに固定しているタイラップを切り取り、バーチカルシリンダー後方にあるブローバイホースのクランプを緩めてブローバイホースをバルブから抜き取ります。

各タイミングベルトカバーを固定している全てのボルトを取り外します。
カバーは3分割されており、バーチカル側の2つのカバーは各2本あり、内1本はサブフレームの穴の奥に隠れています。
ホリゾンタル(水平=前バンク)側の大きいカバーは12本のボルトで固定されています。内1本はエンブレムの奥に隠れています。エンブレムは接着剤に付属するプラスチックのヘラ等でこじって外します。マイナスドライバーを使用するとカバーが損傷するので気を付けてください。

この段階では固定ボルトを全て取り外し、各カバーがフリーに動く状態にして次の工程に進みます。
ホリゾンタル側の大きいカバーはまだ外すことはできません。

最初にバーチカル側の上側カバーを取り外します。
隅が爪で引っかかっていますが、全てのボルトを外すとフリーになります。

ブローバイホースが装着されるチャンバーの固定ボルト(トルクス頭の木ねじ2本)を外します。
チャンバーとホースを外すことはできませんが多少は動きやすくなります。

ブローバイホースの全面とベルトカバーにシリコンスプレーを吹き付けて滑りやすくし、ホースをフレームとカバーの隙間を滑らせて引き出します。
一般の方には見せたくない作業ですが、ホースやカバーを損傷させずにスペースを確保することができます。

ブローバイホースがカバー上に無くなったことでホリゾンタル側のベルトカバーを取り外すことができるようになります。
まだバーチカル側の中間カバーが残っていますが、これを取り外すことは困難なので放置して作業を進めます。

スパークプラグを取り外す

タイミングベルトを交換するにはクランクシャフトを回す必要があるのでスパークプラグを取り外します。

初期型のムルティストラーダやディアベル以外はツインプラグなのでヘッドの左側にもプラグがあります。
1198まで多用していたダイレクトイグニッションコイルは熱による破損が相次いだのか廃止され通常のプラグキャップになりました。
ヘッドカバーに埋め込む方(トップ側)のプラグキャップは抜き取る際に固着していることがあり強い力で引く必要があります。
プラグコードとプラグキャップは一体型で、キャップからコードが抜けたときは破損させたことになるので、プラグコード&プラグキャップをアセンブリで交換する必要があります。
キャップを外すときは絶対にコードを引っ張らないようにしてください。
スパークプラグを脱着するには対角14mmのプラグソケットを使用します。

バーチカルヘッドのサイド側スパークプラグはヘッド壁面との隙間が少なく、本来は特殊工具を使用します。ただし頭を薄く削った14mmのメガネレンチでも代用可能です。

スパークプラグは合計4本あります。
ベルトを交換する際には全てのプラグを外す必要はありませんが、3万kmごとに交換する必要があります。点検の際は全てのプラグを取り外して必要に応じて交換してください。
この車両はNGKのMAR9A-Jが指定で、通常は純正部品として販売されているプラグを使用します。
非常に高価なプラグですが必ず指定プラグを使用してください。
NGKのCR9EBはサイズや電極の形状が近いですが、白い碍子部の直径が太くなりプラグキャップが装着できないか外せなくなり、最悪の場合はキャップを破損します。CR9EBは絶対に使用しないでください。
点検が済み次第、安全のためトップ側(ヘッドカバー内)のプラグは仮装着しておくことをお勧めします。
サイド側のプラグはこの後の工程のために取り外したままの状態にしますが、異物の侵入を防ぐためにプラグホールをウエスで保護します。

ここまでの内容でタイミングベルト交換の準備段階の解説を終了します。
ベルトを交換する手順はこちらのページを参照してください。

 

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