ドゥカティ1198Sに装着されているオーリンズ製フロントフォーク(Φ43)のオーバーホールの手順と、フロント回りの組み上げ方を解説します。
オーリンズ製フロントフォークは多くの車種で内部構造が同様です。
インナーチューブの直径が同一であればオイル量は同じなので他の車種でも参考にしてください。
ショーワ製倒立フロントフォークのオーバーホール手順はこちらを参考にしてください。
「オーバーホール」について
オーバーホールの定義としては、フロントフォークのインナーカートリッジまで分解して内部の消耗品を交換したりスライディングカラーの交換、トップキャップの分解整備、インナチューブの交換までしなくてはいけないのですが、今回は一般的な設備で可能な範囲で分解しオイルシール・ダストシール・フロントフォークオイルを交換する内容をオーバーホールとします。
この内容で整備してもオイル漏れが直らない場合はインナーチューブの再メッキもしくは旋盤加工が必要で、ダンパーの減衰力が復活しない場合はインナーカートリッジをサスペンション専門店かカロッツェリアジャパンに送り修理を受ける必要があります。
オーリンズが漏れやすいのは事実です。
一般的にオーリンズのサスペンションは漏れやすい傾向にあります。
オイルが完全に漏れないようにシールを強くすれば動作が悪くなり、シールを弱くすれば動作は良くなるもののオイルが漏れます。
オーリンズの場合は動作性能を優先しているので多少漏れやすいのは仕方ありません。
多少漏れても性能は悪化しません。漏れやすいかどうかは良いか悪いかではないのです。
オーバーホールする必要性について
リアサスペンションであれば漏れるオイル量もしれているので危険が少なく神経質に修理する必要はありません。
しかし、フロントフォークは出てくるオイルが多くブレーキやタイヤに付着する可能性があり危険です。
ゆえに、フロントフォークからオイルが漏れた時は安全のためにも早めに修理しましょう。
なお、サーキット走行するとフルブレーキング時にフロントフォークが後方にしなりパイプが瞬間的に変形するためにオイルが漏れます。
走行後にオイルを拭き取って通常使用したときにオイルが漏れなければ修理する必要はありません。
公道走行や車体保管状態で引き続き漏れてくるようであればオーバーホールします。
ただし、新車や中古車をバイク屋さんが販売するときに「オーリンズはすぐに漏れるから仕方ないですよ」と言ってそのまま売るのはお門違いです。
買う側の人はそれなりにお金を払って購入するのですから、たとえ仕方ないオイル漏れであっても希望があればキチンと直してから納車する義理が売る側にはあります。
では、その直し方について解説していきましょう。
1198のサービスマニュアルとデータ
1198のサービスマニュアルは以下のURLにアクセスすると参照できます。
http://a20.net/~bert/files/ducati/1198-manual-2009/wsm/en/home.html
フロントフォークのサービスデータを抜粋します。
今回整備するオーリンズフロントフォークにはオイル量の指定が無い代わりにオイルレベルが記載されています。
アウターチューブ最圧縮(スプリング&カラー無し)状態でオイルの量が155mmになるようにします。
尚、サスペンションのサービスデータは1098と共通です。
フロントフォークを外す準備をする
まず、フロントタイヤ、ブレーキキャリパー、フロントフェンダーを外します。
ここまでの手順は割愛します。
フロントフォークを外す前に各部のセッティングを予め確認しておきます。
プリロード、リバウンド、コンプレッションを自分が判るようにメモしておき、左右フォーク全てのセッティングを最弱状態にします。
オーバーホールが完了して組み上げた時に元のセッティングに戻します。
基本的に各部最弱状態で分解していきます。
突出しの距離を測ります。ノーマル状態での距離の規定値はありますが、基本的には元の位置に戻します。
トップブリッジの上端部とアウターチューブ上端部の距離を参考にすると誤差が少なくて済みます。
セパレートハンドルの開き角度も最初に確認しておきましょう。
トップブリッジの切り欠きとハンドルバーの切り欠きを見比べておくと確実です。
ノーマルハンドルは位置決めピンがあるので印を打たなくても大丈夫です。
トップキャップを緩めるためのオーリンズ専用特殊ソケットを準備します。
画像の商品はこちらから購入できます。純正の工具に比べて使いやすく、傷対策もされているので優秀です。
「オーリンズ 工具」と検索すれば色々な工具ブランドからトップキャップ用のソケットが販売されているので、好みの製品を入手しましょう。
トップブリッジとハンドルバーのクランプボルトを緩めます。
このボルトが締まっているとトップキャップの部分が締め付けられているので、キャップを緩めることができません。
逆に言えば、トップキャップはエンジンオイルを交換するときにオイルを注ぎ入れる箇所のフィラーキャップ程度の力で手で締めてさえいれば緩んだりオイルや空気が漏れることはありません。
ソケットをしっかりと持ってキャップに押し付けながら緩めます。
このときにソケットがキャップから外れると傷つけます。今の段階でトップキャップを外す必要は無いので、スッと緩めばOKです。
車載状態で予めキャップを緩めておくのが最も安全確実です。
最後にアンダーブラケットのクランプボルトを緩めてサスペンションを外します。
車種によっては緩めた瞬間にフォークが地面に落ちることがあります。
片手でサスペンションを持っておくか、地面にクッションを敷いておきます。
抜けにくい場合はサスペンションを回さないように真っすぐ下向きに抜きます。フォークを回すと外しやすくなりますがアウターチューブのアルマイトにギザギザ模様の跡が付きます。
ブラケットに浸透潤滑剤をスプレーするかクランプボルトの切り欠きにプラスチックのヘラを叩き入れると外しやすくなります。
サスペンションを抜く最後の瞬間にアクスルシャフトの部分が地面に当たって傷をいれることがあるので、外すときは最後の瞬間までスローモーションで細心の注意を払って作業しましょう。
ちなみに、サスペンションが抜けやすい車種と抜けにくい車種の違いはトップブリッジ&アンダーブラケットのフォーク穴を加工する時の工程で違いが生まれるらしいです。
各メーカーでポリシーが違うので、一概に良し悪しではありません。
フロントフォークを分解する
トップキャップを先ほどの特殊ソケットで完全に緩めると、アウターチューブが外れて内部が露出します。
画像の真ん中の位置にある17mm六角ナットに回り止めをして、トップキャップのプリロード部を17mmのレンチで互いに逆方向に回すとトップキャップを緩めることができます。
トップキャップを外すことができました。
ここまではショーワ製サスペンションよりも比較的簡単です。
トップキャップ以下の部品の配置の画像を撮って元通りに組み上げられるようにしてください。
ナットの締め込み位置によってスプリングにかかる初期荷重(プリロード)が変化します。
キャップを外したあとはナットから出たシャフト部分の長さを計測し、組付け時に元通りにできるようにします。
ナットは17mmディープソケットか、無ければ手で緩めて外すことができます。
ナットを外すとインナカートリッジのロッドが落下して、トップキャップ下の部品がフリーになります。
スプリングは今のうちに取り出しておきます。
サスペンション中心部にあるインナーカートリッジの穴には細長いパイプが入っています。
これも今のうちに外しておきます。
サスペンションをひっくり返してオイルを抜きます。
その際に、画像にあるように指でインナーカートリッジの穴の部分を半分程抑えておいてください。
オイルを出すときにスプリング下のカラーが抜けます。
組み上げる時に向きを間違えないようにしましょう。
インナーカートリッジ(先ほどの細長いパイプの入っていた部分)の穴からピストンとスプリングが出てきます。
カートリッジ穴を指で半分塞がずにサスペンションをひっくり返すと、知らない間にこの部品が落下します。
オイルの中に落としたまま組み付けるのを忘れないように、ピストンとスプリングの向きを間違えないようにしてください。
画像の向きが正しいです。
中の部品を取り出したらインナーチューブとアウターチューブをそっと引き抜きます。
一般的なサスペンションと違い、オーリンズは叩かずとも分離することができます。
画像の様にシールが着いたままで外せます。
ショーワ製サスペンションなら分解前にダストシールとサークリップを外しますが、オーリンズの場合はインナーチューブを抜くまでシールにはタッチしません。
アウターチューブ単体の状態でダストシール、サークリップ、オイルシールの順に外します。
ダストシールはアウターチューブとシールの隙間にマイナスドライバーを差し込み、シールの端を叩いて外します。
この時にアウターチューブに傷を付けないようにしてください。
サークリップは整備用のピックで外せます。
オイルシールも一般的なシールを外す工具で取れます。マイナスドライバーでオイルシールを無理に外すとアウターチューブを傷つけるのでやめてください。
オイルシール下にはワッシャーがあります。紛失しないように外しておいてください。
アウターチューブ内にスライディングカラー2カ所が圧入状態で残ります。
インナーチューブとアウターチューブの間にガタが発生していない限り外したり交換する必要はありません。
交換する場合、カラーは純正品しか使用できないのでドゥカティに注文する必要があります。
圧入カラーの打ち替えは、サービスマニュアルに記載されているように専用工具が必要になります。
インナーチューブは灯油に浸した柔らかい布で拭いて汚れを取ります。
軽い錆がある場合は真鍮ブラシで優しく擦って除去します。
コーティングされているインナーチューブはサンドペーパーや砥石を使用すると色が剥げる可能性があります。
真鍮ブラシで取れない錆はどうすることもできません。分解前に掃除してみて、無理と判ればサスペンション専門店に相談しましょう。
インナーチューブは洗浄しません。
インナーカートリッジを外さないので、洗浄すると内部に溶剤や洗剤が残るためです。
外観を清掃したら、インナカートリッジを伸縮させて内部のオイルをある程度抜き、宙吊り放置して出来る限り古いオイルを排出します。トップキャップも構造が複雑なので洗浄してはいけません。
それ以外の部品、アウターチューブやカラー、ロッド、スプリング等は単体部品なので念入りに洗浄します。
シールを組み付ける
シールはSKF製のオーリンズ用フォークシールセット 品番「KITB-43O」を使用します。
品番にある「B」はブラックで、SKFシールであることをアピールするグリーンも設定されています。
「43」はインナーチューブ直径43mm用の意味。
品番末尾のOは数字の「ゼロ」ではなくアルファベット(オーリンズ頭文字)の「オー」です。
純正品よりも安く早く入手できて、漏れにくく摺動抵抗が少ない逸品です。
汎用品なのでオイルシールの厚みが純正品よりも薄いです。
付属の樹脂スペーサーをオイルシールの下に配置して使用します。
オイルシールとダストシールを念入りに掃除して埃や異物を掃除します。
万が一異物が残っているとインナーチューブを傷つけます。
オイルシールの内側にシリコングリスを塗布します。
グリスはチューブから直接取り出したものを使用して異物混入しないように気をつけてください。
金属ワッシャーをアウターチューブに入れ、次にシールに付属の樹脂スペーサーを入れます。
オイルシールを入れて画像の様に真っすぐ配置します。
シールの圧入にはスプレー缶を使用します。
これならシールの外径にぴったり合い、缶の内側がいい具合に窪んでいるのでリップやアウターチューブに干渉せずに真っすぐにシールを圧入することができます。
一般的なフォークと違い、オーリンズのシールは叩かずに体重をかけて慎重に真っすぐに押し込みます。
オイルシールが真っすぐに挿入できていることを確認したらサークリップを指で装着します。
ダストシールを指で装着します。
ダストシールの内側にはシリコングリスを薄く塗りました。
SKFのシールは抵抗が少なく塗らなくても大丈夫ですが、念のため。
アウターチューブ挿入前に、ダストシールのリップ部にあるスプリングを指でつまんで外し、インナーチューブに入れておきます。
インナチューブにはフォークオイルを全体に塗布しておいてください。
インナーチューブにアウターチューブを慎重に挿入します。
シールに引っかかって無理に挿入すると損傷します。中ほどまで挿入すると、アウターチューブに圧入されているスライディングカラーにインナーチューブの先端が当たります。
お互いのチューブを慎重に動かして中の様子を探りながら進めてください。
アウターチューブを奥まで挿入することができました。
ダストシールのリップ部にスプリングを装着し直しておいてください。
サスペンションオイルを入れる
ダストシールまで装着が完了したらオイルを充填します。
オイルの銘柄には指定がありますが、専門ディーラーで使用しているオイルも各社様々です。
指定オイルを使用しなかったからオイルが漏れたり爆発したりはしないので、それぞれで用意しているサスペンションオイルを使用してください。
粘度の純正指定は7.5Wですが、ある程度は好みです。
フロントフォークを立ててオイルをボトルから直接、静かに入れます。
アウターチューブ上端、満タンまでオイルを入れてください。
インナーチューブとアウターチューブの間の空間にもオイルが行き渡り、エア抜きが確実にできます。
インナーロッドを数十回、ゆっくりと上下にストロークさせて気泡が出てこなくなるまで念入りにエア抜きをします。
オイルが減ったら再度満タンまで充填してエア抜きを繰り返します。
時々フォークを左右に振って隙間に忍び込んでいる気泡を逃がします。
エア抜きが完了したら、ピストンとインナーロッドの中に入るパイプを入れます。
装着順番と向きを間違えないよう、元通りになるように気を付けてください。
インナーロッドを再度上下させてエア抜きをし、ロッドを引き上げるとパイプが勝手に上に飛び出してくることを確認します。
サスペンションを立てたままの状態で注射器を使用してオイルを抜きます。
アウターチューブ上端と油面の間の距離が155mmになるようにします。
オイルの量は、ある程度は好みで大丈夫ですが左右で揃うように気をつけてください。
オイルが少ないとフルストローク(サスペンションが動かなくなる最圧縮の状態)までの距離が長くなり、オイルが多いとフルストロークまでの距離が短くなります。
油面=サスペンションの硬さ柔らかさ とは違います。
極端に多く入れすぎるとサスペンションがほとんど動かずリジット状態になり、非常に危険です。
ノギスを挿入して狙い通りの油面になっているか確認します。
オーリンズは内部の隙間が少なく、市販の油面調整器具が入らないかもしれません。
サスペンションを組み上げる
エア抜きと油面調整が完璧にできたらカラーを元の向きで挿入します。
続いてスプリングを挿入します。
シングルレートの等間隔スプリングなので向きはありません。
スプリングを入れたらインナーロッドを引き出します。
指が入らないときはラジオペンチ等でスプリングの間からロッドを掴み引き上げます。
ロッドを指で保持したままトップキャップ下の部品とナットを装着します。
スプリングを押し下げながらナットを元通りの位置まで締め込みます。
今回、ロッド上端部からナット上端部までの距離は24mmでした。
ナットは、元の位置まで来たらネジ山の途中で止めます。
外した時と同様にナットに回り止めをしてトップキャップのプリロードを締め込みます。
規定トルクはありません。
トップキャップはアルミニウムで構成されているので締めすぎに注意して下さい。
アウターチューブを押し上げ、トップキャップを特殊ソケットで締め込みます。
ソケットを手で持ってしっかり締めこめば大丈夫です。
絶対にインパクトレンチを使用してガチガチに締め付けないでください。
サービスマニュアルでは「トップキャップを規定トルクで締める」と記載されていますが、トルク表を参照しても残念ながら書いてありません。
最初の方でも書きましたが、キャップなので手締め程度の力で奥まできちんと締まっていれば問題ありません。
トップブリッジのクランプボルトを締めるとトルクが伝わって絶対に動かないようになります。
締めすぎて、次回に分解する人が困らないようにしましょう。
完成チェックをする
オーバーホールの最後に以下の項目を確認してください。
- サスペンションをストロークさせて正常に動くか?
- オイルが漏れてこないか?
- コンプレッション、リバウンド、プリロードを最強まで調整して各セッティング機能が働いているか?
- 片方のサスペンションと比べて全長が変わっていないか?
- 作業台を片付けて、組み忘れた部品が残っていないか?
仕上がりに問題が無ければサスペンションに付着したグリスやオイルをウエスで拭き取ります。
この時、パーツクリーナを使用しないでください。
特にインナーチューブを脱脂すると新品のシールが痛んだり、チューブの表面が錆びます。
日常のメンテンス時でも、インナーチューブの表面には油分が薄く乗っているようにしてください。
サーキットで使用するときは、インナーチューブにシリコングリスを塗っておくとシールの動きが良くなります。
最後にサスペンションのセッティングを元の値に戻します。
新車時のセッティングは冒頭に載せたサービスデータ表に記載されています。
各走行シチュエーションに合わせたセッティング推奨値はオーナーズマニュアルに記載されてることもあります。
フロントフォークを車体に組み付ける
左右フロントフォークを車体に組み付けます。
トップキャップの端にある「ー」のマークを車体後方に向けて装着します。
これといった規定ではないので、必ず守る必要はありません。アウターチューブに傷や錆びがあって隠したい時はその部分を車体内側にしても良いです。
アンダーブラケットのボルトを1本仮締めしてフォークを緩く仮止めし、突出しの高さを元の位置に合わせます。
サービスマニュアルから抜粋したフォークの正規取付位置を示した図です。
突出しの具合によって前後荷重・ハンドリングが変わりますが、ある程度は好みになります。
アンダーブラケット上端部からフロントフォークトップキャップ上端面の高さが243.2±0.5mmとなっています。
多くのケースではハンドルバーやトップブリッジ装着状態でフォークを脱着するので正確な計測は困難です。
後のバイクでは、アンダーブラケット下端部⇔アウターチューブ下端部の距離を取付高さの基準にするようになったので組付け後に正確な計測が可能となりました。
リアの車高を変えていない場合は上の図を参考にして頂いても良いかと思います。
取付位置を決めたら左右のアンダーブラケットクランプボルトを14N・mで締め付けます。
ネジ山には、モリブデングリス等の締め付け用のグリスを塗布して下さい。
クランプ部にボルトが2本ある場合は、規定トルクで2本交互に3往復程度締め付けます。
片方1回ずつ締めて終えると最初に締めた方のボルトが緩い状態となってしまいます。
このボルトはM8×1.25で、他の部分のM8ボルトは通常であれば22N・mで締めます。
しかし、アンダーブラケット部にはフォーク可動部があるので締めすぎると動作が悪化します。
そのために、14N・mというあえて低い締め付けトルクが規定値となっています。
左右アンダーブラケットの締め付けが完了したら、左右トップブリッジボルト→左右ハンドルクランプボルトの順に22N・mで締め付けます。
ここはM8ボルトとして通常のトルク感覚で締め付ければ良いのでトルクレンチが入らない場合は手締めで大丈夫です。
ともにネジ山には締め付け用グリスを塗布して下さい。
右フロントフォークに装着するケーブルガイドのクランプを締め付けます。
画像では写っていませんが、ガイドの下側にはアンダーブラケット切り欠き部に合うように位置決め凸部があります。
規定位置に合わせないとハンドルを右一杯に切った時にガイドが干渉して破損します。
締め忘れやすい箇所なので忘れないように。
フロントホイールを組み付ける
フロントホイールを組み付けます。
アクスルシャフトの全体に万能グリス(グリスであれば種類問わず)、シャフトとアクスルナットのネジ部&ナットのワッシャーにモリブデングリス等の締め付け用グリスを塗布します。
ホイールのダストシール内側とカラーに付着した汚れを拭き取り、ダストシールの内側にシリコングリスを塗布してカラーを装着します。
全長が短いカラーはホイール右側に、長いカラーは左側に装着します。
アクスルシャフトを右側から挿入しホイールを装着します。
ホイール&タイヤのローテーションを確認して向きに間違いがないか確認してください。
多くのドゥカティはホイールの向きを間違えても普通に装着できてしまいます。
シャフトを奥まで挿入したらアクスルナットを手で締めます。
アクスルシャフトをクランプする、ボトム部のボルト4本に締め付け用グリスを塗布し、指で装着します。
フォーク左側のボルトを適当な力で仮締めします。
この段階でフォーク右側のボルトを締めてはいけません。
フロントアクスルナットを63N・mで締め付けます。
アクスルナットを締めた後に、先ほど仮締めしたボトム部のボルトを完全に緩めます。
ここまで出来たら、ジャッキを外してフロントタイヤを地面に設置させます。
車体が垂直になっている状態でアンダーブラケットを掴んでフォークを屈伸させます。
ドゥカティの左側フォークはアクスルシャフトに固定されており、アクスルナットを締めると動かなくなりますが、右側のフォークはアクスルシャフト上でフリーに動きます。
この作業をすることで右側フォークが正しい位置になります。
いわゆる芯出しの作業をしているところです。
先ほどアクスルシャフトの全体にグリスを塗布したのは、シャフトがスムーズに入るようにして右側フォークが余計な動きをしないようにする為です。
芯出しをしたら、タイヤが設置した状態のまま、右側フォークのボトム部のボルト2本をそれぞれ19N・mで締め付けます。
オーリンズのサスペンション装着車の場合、この箇所はM8ボルトであれば必ず19N・mです。
それ以上のトルクをかけると肉薄のクランプ部が割れます。
続いて左側フォークのボルトも19N・mで締め付けます。
フロントブレーキキャリパーを装着する
左右ボトム部のボルトを締め付けたらフォークが動くことはありません。
フロントホイールをスタンド等で浮かせてフリーに回転する状態にします。
キャリパーボルトのネジ山と頭の下部(座面)に締め付け用グリスを塗布します。
ネジ山には必ずグリスを塗布してください。
座面に塗る理由は、ごくまれにボルトとキャリパーが座面の部分で噛り付く為、予防策です。
キャリパーのピストンを完全に押し戻します。
奥まで押し戻せない時はフロントブレーキマスタシリンダーのタンクを解放してください。
フルードが入りすぎていると溢れ出ることがあります。気をつけてください。
ホイールを傷つけないように、左右キャリパーを慎重に挿入します。
左右キャリパーボルトを弱い力で締めます。気持ちとしては2~3N・mです。
キャリパーを仮装着したらフロントブレーキレバーを何回か握り、ピストンを完全に出します。
その後、レバーを握ったままの状態でレバーを固定します。
ブレーキが強くかかった状態のまま、キャリパーボルトを45N・mで締め付けます。
ドゥカティはラジアルマウントキャリパーであれば全車45N・mが規定トルクです。
レバーを解放し、キャリパーを念のため再度規定トルクで締め付けます。
フロントホイールがスムーズに回転するか、ブレーキレバーを握るとレバーのタッチが硬いか確認します。
ここまでのキャリパーを締める手順は、ラジアルマウントキャリパーがブレーキディスクに対し正しい位置になるように芯出しをするための作業になります。
作業が正しくできていれば、ホイールを回すときの抵抗感が全周で均等になっているはずです。
これで走行中のブレーキング時に、制動力がスムーズに発揮される状態になりました。
高速道路をメインで走るとブレーキディスクとパッドが片摩耗します。その場合はホイールを回した時に、重くなったり軽くなったりする箇所が生じます。キャリパーの芯だしは片摩耗を予防する効果もあります。
ブレーキング時にレバーに反動がきてガクガクする症状があればブレーキディスクとパッドを新品に交換する必要があります。※ガクガクする症状はブレーキ用語で「ジャダー」と言います。
ちなみに、4輪乗用車であればブレーキローターを面研することで交換せずとも改善できます。
最後に、フロントブレーキマスターシリンダーのリザーバータンクキャップを外して清掃します。
キャリパーピストンを戻すとフルードの液面が上昇してパッキンの隙間に侵入します。
清掃をしないと走行中にフルードがキャップの隙間から漏れ出て、スクリーンやメーターに付着し、変色や割れの原因となります。
オーリンズ装着車であればここまでの手順は大まかに同じです。
もしご不明な点等があれば当店までご連絡くださいませ。
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