押しがけの方法

整備以外のテクニック集

バッテリーが上がったときにエンジンをかけるのに有効な方法。

それは押しがけです。

今回はこれを取り上げます。

押しがけとは?


エンジンがかかっていない状態で、人力でバイクを押してエンジンを始動する方法のことです。

普段、走行しているときは、エンジンが回っていて、ギアを入れていて、クラッチレバーを放していますね。

ならば、ギアを入れてクラッチレバーを放している状態でバイクを前に人力で押せばエンジンを回すことができるので、スタータースイッチを押さなくてもエンジンを始動できるはず。

これが押しがけです。

補足

エンジンは止まっている(回転数ゼロ)と、自分では動くことはできません。
バッテリーに蓄えた電力を使ってモーターで最初の勢いをつけて回さないと始動できないのです。

エンジンをかけるときに「キュルキュル!」と音がするのはモーターが回っている音です。(厳密にはスタータークラッチという部品によって音色は変わります)

とはいえ、モーターを使ってエンジンをかけないといけないわけではなく、可能な車種ならば別の方法でエンジンを回し、回転に勢いをつけてエンジンを始動しても構わないのです。

 押しがけの方法

兎にも角にも!
バッテリーが上がっていてエンジンがかからない今、
どうしても走りたいのならば「押しがけ」にトライしましょう!

①バイクを前に押す。
一番確実なのは下り坂を使う方法。
できるだけ急で長い下り坂まで頑張ってバイクを押していきましょう。

バイクに跨った状態で地面を足でキック!

スピードは最大限出すように、50m走を全力で走るぐらいの勢いは欲しいです。
下り坂が無くて仲間が居るのならジャンケンで負けた方の人に全力で押してもらうのも手です。
あとでジュースをおごりましょう。

排気量が大きいほど、気筒数が少ないほど勢いをつけましょう。
原付や2ストならば、平地で駆け足する程度の速さで十分です。

レーサーみたいなカッコいいスタイルの押しがけはバイクを倒してしまいそうで怖いので私はできません。
いや、しません。

②クラッチを握り2速に入れて、「スパッ」とクラッチを放します。
このとき、ステップではなくシートに全体重を乗せておいてください。

失敗すると後ろのタイヤがロックします。
バランスを崩して転倒しないでくださいね。
ロックするときは、クラッチを放す勢いが足りない。もしくはスピード不足。あるいは貴方の体重が軽すぎます。
一番大きい友人に頼みましょう。

 

 

③おっと。あらかじめキーをONにしておくのを書き忘れてましたわ!
キャブレター車でエンジンが冷えているのならチョークを引いておいてください。

普段、セルを回してエンジンを始動するときの前準備と同じです。
準備が整っている状態で押しがけが成功するとエンジンから「ボンボン」という息吹が聞こえるはず。
そしたらクラッチを切って素早く空ぶかしをして勢いをつけてあげてください。
アクセルから手を離してもアイドリングが続くようになったら成功です。

 

 

エンジンがかかればバッテリーが復活する

 

多少のバッテリー上がりでしたらエンジンさえ回れば、発電機による充電でバッテリーが復活し、アイドリングが続くようになります。


↑バイクのエンジンに内蔵されている発電機。
「オルタネーター」や「ACジェネータ」と呼ばれています。
エンジンは走るために回転しますが、その時この発電機も同時に稼働しバッテリーを充電します。

 

押しがけのできる車種

 

まず、マニュアル車であること。
スクーターや、クラッチレバーの無い車種では押しがけはできません。


↑スクーターの左側にあるエンジンのカバーを外した状態。(写真右側の丸い部品がスクーターのクラッチ)
変速機(左側の赤い矢印の部品。エンジンに直結しています。)が回転するとベルトによってクラッチが回ります。
回転した勢いで中身の部品が動作して自動的にクラッチをつなぐ構造となっております。
「自動遠心クラッチ」または「CVT」と呼ばれる部品です。

これらは自動のクラッチを採用しているので、エンジンがかかっていないときは常にクラッチが切れた状態にあり
後輪タイヤを回してもエンジンとタイヤが繋がらないため
押しがけしても意味が無いんですね。

 

 

次にスリッパークラッチ付きの車種。

スリッパークラッチとはギアを一段下げたときに「ガクッ」とくるショック(シフトダウンショック)を減らしてスムーズに走れるようにする特別なクラッチのことで、
以前はレース専用の高級品でしたが、
最近では250ccでもノーマルで採用される等、普及してきました。

ご自分のバイクに採用されているかどうか心配になりますが、
スリッパークラッチ付きのバイクで押しがけしても壊れるわけではありません。

ただ単に、
バイクを押してクラッチを繋いだときに空回りするような、
手応えの無い感じがしてエンジンを回せないだけですので、
やってダメなら諦めましょう(^^)

スリッパークラッチ付きであっても全てがダメな訳では無いかと。

ただドゥカティの749Rでは完全に空回りしたような記憶があります。

少し専門的になりますが、「アシスト&スリッパークラッチ」よりもスパイダースプリングを使ったスリッパークラッチの方がバックトルクを逃す能力が高い印象があります。

↓ちなみにこれはバイクとしては特殊なタイプで、モトグッチのエンジンを分解した図です。
4輪のマニュアル車に近い構造で、排気量が大きく体力が必要ですが、押しがけ可能です。

 

押しがけをすると壊れる⁉︎

カワサキの古い車種(いわゆる旧車)で押しがけするとスタータークラッチが痛む」という噂を聞いたことがあります。
スタータークラッチに負荷がかかるのは、リアタイヤを逆転させた時なので、
押しがけでスタータークラッチが傷むというのは説得力にかける話です。

スタータークラッチとは?

エンジンをかけるときにモーターとエンジンを繋ぐクラッチのことです。
これが傷むとモーターを回しても空回りしてエンジンが始動できなくなる他、
常にエンジンとモーターが繋がる状態になりモーターが傷んでしまいます。

手持ちの都合でドゥカティのスタータークラッチの写真を載せます。
とある理由で傷んでしまい、使用不能となった図です。
押しがけは関係ありませんよ!


確かに古いカワサキ車のスタータークラッチは繊細で、GPZ900Rのスタータークラッチ交換には参りました。(オイルパン外して下に潜り込んで作業したような記憶が)

それよりも、
旧車は常日頃からスパークプラグとキャブレターを良い状態に保ち、
バッテリーを充電してからエンジンをかけるようにした方がスタータークラッチには優しいでしょう。

 

インジェクション車と押しがけ

 

インジェクション車や最新型で押しがけするとコンピュータが壊れるという噂も聞きます。

これも特に因果関係はありません。

「インジェクション車」は、
バッテリーの電力を使い、
エンジンが回転しているときに燃料ポンプを回し、
コンピュータを稼働させ、
インジェクターを動作させて燃料を送り、
イグニッションコイルに電源を供給しエンジンを稼働させるものです。

最低限、
キーONでメーターが満足に表示される程度の電力がある状態で、
エンジンを回転させれば問題無く始動できるはずです。

「コンピュータが壊れる」という根拠も特にありませんが、
もしそうなら、普通に走っている(後輪が回っている)状態で壊れるはず。
コンピュータはエンジンが動いたら仕事をし始めるものですし、最初にエンジンを動かす動力はモーターでもタイヤ(人力)でも構わないのです。

 

ご注意!

押しがけは大変ですし失敗すると転倒するので危険ですね。
やっても壊れないけどできるだけしない方が良いです。
いざってときの方法ぐらいに留めておきましょう。

タイヤが冷えてるときや雨で地面が濡れているときなんか特にロックしやすくて危ないですしね!

エンジンがかからなくてお困りの方は是非ご参考ください!

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