バイクの整備士の仕事は楽しい

バイク業界コラム

やはり「バイクの整備士は楽しい!」これに尽きます。

このブログを読んで下さっている方の多くはバイクのオーナーで、「整備士」は愛車を修理する裏方的なポジションに見えると思います。
今回はそんな、バイクの整備士の仕事について紹介します。

バイク整備士になるには

まずはここから。
整備士は憧れの仕事ですが、案外簡単に就くことが出来ます。

整備士人口は年々減少傾向にあります。どこのお店であっても人手が常に不足しており、モチベーションさえあれば敷居の高そうなお店でも面接を申し込めば受け入れてもらえます。
逆に、店主のみで運営しているような個人店等の小規模のお店では従業員を雇うことは稀です。

整備士を目指すのであれば、ホームページで募集しているお店を探す方が良いでしょう。

また、常連として通っているお店に雇ってもらうパターンもしばしばあります。
お店としても仲の良いお客さんと家族の様な仲で一緒に働けるので歓迎してくれますが、私の経験上それは考えた方が良いです。

バイク屋さんの仕事は少数精鋭。一人で多様な業務をこなさなくてはならず、何でも出来る人材が求められます。

大企業と違って一人ひとりのウェイトが重く、本気で取り組まなくては自分の立つ瀬が無くなります。
客だった時は仲良く接してくれたお店の人に辛く当たられる苦痛は想像以上でしょう。

 

それでもバイクが好きなら挑戦するべきですが、仲の良い店よりは交流の無い店で整備士ライフを始めるのも良いと思います。

整備の専門学校を出る必要はありません。高卒でも中卒でも入れ墨があってもモチベーションがあれば雇ってもらえます。

というか、整備の技術は仕事で学ぶのが手っ取り早いので数年間座学に費やすよりも早く就職した方が実技年数が稼げて良いです。
とはいえ、車の正規ディーラーなどでは学歴が関係あるかもしれません。ピンポイントにバイクの整備士を目指すのであれば学歴は不要です。

 

レッドバロンに就職すればお金を貰って勉強ができます。
雇用は安定しています。転勤族でも良いならばこちらを参考に検討してみましょう。

 

また、高級車を扱っていたり、工賃が高い店だからと言って給料が高いわけではありません。
4輪でもレクサスの整備士は意外にも食べていくのがやっと。というのは業界では知られた話です。

結論は、実際に面接を受けて給料待遇を詳しく訊き、将来を見据えて安心できそうな会社であれば前向きに検討する形で就活しましょう。求人の内容と、面接で聞いた待遇が違っていた。なんてこともしばしばあります。

一概に言えるのは、人の入れ替わりが激しい店は要注意です。

整備士に採用されやすい条件

年齢に関しては、概ね30代ぐらいまでなら未経験でも採用のチャンスがあります。

バイクの免許を持っていて自分のバイク(できれば大型車)を所有しオイル交換程度の作業経験があれば一気に採用チャンスは高まります。

バイクの整備士を目指すのであれば、まずは運転免許を取り、バイクを購入。バイクは新車ではなくボロボロの中古が良いです。自分で故障を直し整備の経験を独学で積み、自分で直したバイクでちゃんと走れるようになるところまでいけば、間違いなくほとんどのバイク屋さんに就職できます。

 

逆に、若くても免許を持っていなかったりバイクに乗ったことの無い人はほぼ確実に採用されません。

また、整備士の世界は筋力が必要とされるので女性の採用には及び腰です。
チャンスが無いということではありません。バイクが好きでツーリングが趣味で自分でバイクをいじることができれば男女の垣根を越えて採用してもらえるはずです。
(私自身、女性のバイク整備士は見たことないので逆にアリだと思います!)

また、ガソリン等の強い溶剤を扱う仕事です。
手の荒れやすい方や薬品、排気ガスに弱い方は体が持たないかもしれません。

 バイクの整備士の待遇

悪い点

給料はかなり低めです。
雇用形態は、多くは正社員ですが、基本給は最低賃金ベースになり残業代未払いの会社もありスーパーのアルバイトよりも低賃金になる場合もあります。

社会保険は完備している場合が多いです(入らないと違法になりますし)。

退職金は、支給される会社は聞いたことありません。
「老後」という言葉はバイク整備士にはありませんので生涯働き詰めになります。

ボーナスはあればラッキーです。「年2回、賞与◯ヶ月分」は今の仕事に就いて初めて貰いました。

有給休暇取得可否は会社によりけり。社員は少人数なので休み難い場合があります。

休日は定休日によりますが、殆どが平日休みです。土日こそ忙しいので友達やパートナーと休みを合わせるのは難しいでしょう。

 

安全管理は消極的で、作業中の怪我のリスクは高めです。バイクの運転を伴うので交通事故の危険もあります。

金槌で指を強打して爪が変色するのは日常茶飯事…

 

良い点

さんざん落としたので良い点を紹介します!

待遇に絞って言えば、部品を安く社割で買える点にあります。
割引率は経営者の意識によりますが、オイルやチェーン等の消耗品はかなり割安ですし、自分で作業するので当然工賃がかかりません。

 

車検も自分で通せるのでバイクの維持費を相当安く、しかも好きなようにカスタムできます。
仕事終わりに職場の設備を借りて自分のバイクを触ることもできます。
遊びの延長線上の整備ではありますが、同時に勉強にもなるのが良いことです。

 

社員旅行等のレクリエーションも普通の会社に比べたらかなり充実しています
殆どの店で定期的にお客さんを交えたツーリングを開催していますし、身内だけのツーリングも頻繁にできます。

 

研修を兼ねた海外旅行ができる会社も多いです。
私は10年間程のバイク屋人生で、グアム、ハワイ、タイ、イタリアに行きました。
他にもアメリカに行くチャンスもありますし、国内旅行でも沖縄や熊本、四国、静岡、京都、飛騨高山、その他沢山遊びに行きました。
もう働いているのか遊んでいるのか分からない位です。

 

規則は一般的な会社に比べてかなり緩いです。(ただし、大手の販売店を除く)
多くの店は金髪や髭、タトゥーが入っていても面接に通ります。
私は昼休憩に店内で仲の良いお客さんと弁当を食べて談笑していました。

 

規則が緩いのは色々と弊害もありますが、精神的な束縛感が無くフリーな気持ちで働けるので、真反対な今の職場に慣れるのに苦労しました。工場の中ならラジオを聴くなり、好きな音楽を大音量で流しながら作業してもOKです。

周り全ての人がバイクが共通の趣味なので話題に欠きません。(反面、大してバイクに興味無い場合は苦痛になりますが。)

 

もちろんバイク通勤OK満員電車や渋滞にイライラせず毎日スイスイと通勤できます。

 

また、整備士は国家資格なので2級クラスまで取得すれば「手に職」となります。
全国どこでも世界中で、バイクのある所なら修理の技術で食べていくことができます。
また、工具も自分で買う必要があるので、それが商売道具になり一生の財産になります。

 

 

普通の会社に勤めていると、
「月、火、水、木、金。今日は水曜だから休みまで折り返しだなぁ」とか「次の連休までまだ先かとか、定年後の悠々自適ライフを楽しみに日々を消化する為に働くのが当たり前です。

サザエさんや笑点を観てブルーになる。連休が終わりに近いて気持ちが塞ぐ。通勤電車で席取りに必死になる。
これはこれで大変辛いことです。

 

整備士だと平日休みだし、日々充実感があるので休日を楽しみに無為に過ごすことはありませんでした。
時計を見る度に針が進んでいて、アッという間に1日が終わっていましたし、休日を返上して働きたい事もありました。
カレンダーが進んで、連休が来るのを楽しみに働くのでは無く、毎日が楽しかったのです。

新しい車種が発表される。
初めて見る新車が店に届く。
聞いた事のないサウンドを楽しみにエンジンに火を入れる!
これが楽しみだったのです。

 

総じて、待遇面では一般的サラリーマンよりも厳しく生活に困ることも多々ありますが、
働くことの楽しさ、開放感はどの職種よりも良いです。
確かに、給料が安く欲しいものを手に入れられない辛さはありますが、常に楽しいと思って働けることの方が「豊か」だと思います。

 

バイクの整備士が他の職種よりも良かったこと

色々な世界で生きてきた

私はこれまでに、整備士以外にも沢山の仕事を経験してきました。

 

アルバイトも含めると、新聞配達、スーパーのレジ係、建設作業員、水族館の飼育員、愛知万博の日立パビリオンのスタッフ、看板屋さん、イベント会社での地方事務局長(東京のド真ん中でマイクパフォーマンスしてお祭り騒ぎすることもありました)などなど、バイク屋さんでは営業をすることもありました。
他にも名古屋のNHKで催事のスタッフをしたり、三重県の椿大社で織田裕二さん主演の「椿三十郎」の先行試写会の運営スタッフや、コンサートの設営をしたり、街中でティッシュ配り(業界ではサンプリングといいます)をすることもありました。

 

20歳そこそこの頃は、往復の飛行機だけ予約してオーストラリアでフラっと旅して先住民のアボリジニの青年と砂漠の町のバーで飲み交わしたり、半月間ホームステイして語学学校に通って友達を作って学生生活を満喫していました。

 

子供の頃は家から絶対に出たがらない、インドア派でした。
友達が自転車で家に来て遊びに誘ってきても家で一人で遊んでいる方が幸せでした。

社会人になってからは真逆で、職場で寝泊まりしたり他の地域に出て働いたり。あまり実家には寄り付かない生活をしてきました。

 

現在は実家からは500km離れた地域で生きています。
当初は縁もゆかりも友人も親戚も居ない地域での暮らしでしたが、自分で選択して選んだ人生です。
今では友人やパートナーにも恵まれ、町に溶け込むことが出来ています。

 

色々な世界をこの目で見てきました。

学生を卒業して立派な会社に勤め、ちゃんとした給料を貰い、ずっと続けてきた方が良かったのかもしれません。
その方が堅実だし、お金や生活に困らずに家庭を築けていたでしょうし、親も安心できたでしょう。
これから先も、老後の心配もせずにいられるでしょう。

でも私は、その時その時のターニングポイントで後悔の無い選択をしてきました。
社会人になって15年経ちますが、その間に本当に色々な世界を見ることができたし、沢山の人に出会えました。
楽しいこと、辛かったこと、勉強できたこと全てが今の私の糧になっています。

一つの会社に勤め続けてフラットで安定した人生を送るよりも絶対に良かったです。

 

バイクの整備士が一番だった

私は「楽しいこと」が全ての判断基準の「楽天家」です。
楽しい仕事は良い仕事。楽しくない仕事は、待遇が恵まれていても価値の無い仕事です。

その中でも整備士の仕事は一番楽しい仕事でした。
イベントの仕事もかなり楽しかったですが、楽しくないことも多かったですし。

 

「天職」とは、「一生やりたい仕事」を言うのでは無いでしょうか。
その人が得意かどうかではなく、まわりに「向いていない」と言われようが関係無しに、
本人が「一生やりたい」と思える仕事こそが「天職」なのだと、私は思います。

 

私も一番最初に整備をしたときはセンスゼロで、よく周りからお叱りを受けました。
でも夢中になって続けていく内に一人前(?)になり認めてもらえるようになりました。

整備士の仕事で楽しい点は、機械いじりそのものではありません。
お客さんに「ありがとう」とお礼を言ってもらえる事こそが喜びなのです。
(ちょっと怪しいセミナーぽくなりました…すみません。)

 

お客さんにとってバイクは自分の子供の様に可愛いものです。
そのバイクを直してくれる整備士は小児科の先生のようなもので、修理ができた時はお客さんから本当に喜んで貰えます。

お客さんの職種は様々です。
美容師、医者、経営者、エンジニア、同業者、学生、仕事を引退した人、タクシーやバスの運転手、警察官、自衛官、宗教家、教師、芸能人に大工さん、ヤクザ…
その色々な世界に生きる人たち、老若男女問わず笑顔でお礼を言ってもらえる。
こちらが営業的に「ありがとうございました」を言うよりも先に、お金を払う側のお客さんから笑顔でお礼を言ってくれる。

そんな仕事は中々無いと思います。
おまけに仲良くなって、損得抜きのプライベートなお付き合いになることもありますしね。

自分がバイクと誠心誠意向き合って修理する。技術を磨いて手間を惜しまず高品質な作業をする。
そうするとお客さんが分かってくれて褒めてくれる。
すると嬉しくなってますます仕事を深く掘り下げるようになって気が付いたら夜中になっている。

そんな仕事です。

もちろん機械いじりの楽しさもあります。
ジグソーパズルが完成した時の喜びはご理解し易いでしょうか?
バイクは高度なジグソーパズルです。
これを一生懸命分解し洗浄、磨いて悪い部品を交換したり更に分解してリビルドする。そして組み上げて試乗し完成したときの達成感は格別です。

今なら分かります。
あの達成感は整備士以外に味わえない最高のものです。

 

待遇の厳しさを自覚しつつも続けてしまう理由は、これだけ楽しいことがあるからです。

駆け引きも嫌味も無い、ひたすら自分の技術力と誠心誠意が結果に出て、楽しんで取り組めばお客さんに喜んで貰える。
これがバイクの整備士の良いところです。

とある、スクーターのヘッドライトが点かず、修理に持ち込まれました。バルブは切れておらず、最終的にヘッドライト切り替えスイッチの中身がダメになっていました。

本来はスイッチ丸ごと交換ですが、部品の入手に時間がかかりお客さんにとって不便になります。
そこでスイッチ内部をハンダでリビルドしました。これで修理完了!

費用も工賃のみの請求で済みました。お客さんに喜んで貰えたし、やりがいのある作業でした。
こういった仕事をこなせた時が最高に楽しいです!

業界の現状

日本自動車整備振興会連合会(日整連)の統計では表面化していませんが、バイク業界は整備人材不足の苦境にあります。
少子高齢化、働き方の多様化、ブラック企業の表面化により、待遇の悪い職種はますます人材確保が不利になってきています。

私は待遇の厳しさから整備士を辞め、自動車メーカーに勤めていますが、同様の流れが加速しつつあるのかもしれません。
待遇の良い会社に人材が集中し、そうでない会社は社会的な意義や需要があっても人材が流出し経営出来なくなっていきます。

加えて、世襲で引き継いできたバイク屋さんも後継者不足から閉店が相次いでいます。
先進国として成長してきた日本もGDPが伸び悩み、娯楽の象徴たるバイクの国内販売打数も右肩下がり。

 

でもバイクに乗りたい人は永遠に尽きないでしょう。

整備士はこの世に絶対必要な仕事なのです。

 

私は待遇の良い方に流れ、業界を裏切った者の一人です。
ですが、バイク屋さんの仕事にハマった人間はいつか出戻る。そんなジンクスの通り、後ろ髪惹かれる思いで日々過ごしています。

高い給料を取るか。楽しい仕事を取るか。これは究極の選択です。

それに、自分が抜けたことでお客さんが自分のバイクを直してくれる人が居らず不便な思いをしているのでは無いか?という自責の念もあります。

このままでは、地方の人はドゥカティや珍しい外車に乗れなくなってしまうのでは?という危機感もあります。

バイク屋さんの給料が安いのは、
顧客が少なく固定費が高い為。という理由がある他、
販売車両を仕入れる為に常にまとまった資金が必要で、
人件費に割き過ぎると経営が難くなるという側面があるのも理解しています。

ですが、その待遇面を改善しないと「人」は集まらないし、「人」を大切にしないとノウハウも蓄積されません。

なんとかバイク業界に明るい兆しをもたらしたい…

 

蚊帳の外からそんなことを考え日々過ごしています。

 

私の仕事についての考え

これはブログで発信するようなことではありませんが、ちょっと物申したい。そんな気持ちで綴ります。

このブログにあるノウハウ、
例えばサスペンションの錆防止の為にシリコンスプレーを吹いて磨いたり、
チェーンに油をさして磨く方法は整備士として働いている頃に習得したものです。
これをすればお客さんにとって故障を減らせるメリットがあります。

ですが、この様な作業はオマケでするのであり、工賃を頂くものではありません。
しかも余分に時間や手間がかかり、かえってバイクが壊れにくくなり修理の仕事が減る。
経営者にとって最悪の行為です。

私は現役の頃、進んでこういった「余計な整備」をして、お客さんの為にと思って仕事をしてきました。

それが果たして「余計な仕事」なのでしょうか?

 

「チェーンに油をさしたらチェーン交換の頻度が減る」
「サスペンションが錆びればオイルが漏れて修理の仕事が入る」
そんなことを裏で平然と言う。

サービスが悪化すれば、絶対にお客さんは気が付きます。

お客さんはバイク屋よりも頭がいいのです。舐めてはいけません。

褒めてもらえなくても、整備士がサービスしたことはお客さんに伝わっています。喜んでくれています。
だからこそ信頼してもらえるし、他のお客さんも呼んでくれるのです。

目先の利益を求めてお客さんを裏切ってはいけない。
手間を惜しんで品質を落としてはいけない。
自分のスキルを日々磨くことを意識し、より高品質なサービスを顧客に提供しなくてはならない。

私は今では開発の世界に身を置き、サービス業とは無縁ですが、
バイクの販売店ではこれが一番大事なことだと考えています。

 

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