今回はドゥカティを教材に、ホイールを外して組み直す手順を紹介します。
(実際にホイールを外したあとのタイヤを組み替える作業は全メーカーで殆ど共通なので割愛します。)
ホイールの外し方自体はその他メーカーでも共通する面もあるので、幅広い方にご参考頂ければと思います。
対象は両持ちスイングアームです。
片持ちスイングアームの場合は特殊工具や大型トルクレンチが必要になるのでビギナー向けとは言い難いでしょう。
締め付けトルク一覧表
ボルトを締める力(トルク)を一覧にしました。
今回投稿する教材車以外もカバーしたので参考にして下さい。(対象はドゥカティです)
旧世代モンスターの締付トルクは83N・mですが、これのソケットサイズがうろ覚えです…
恐らく24か22mmだったと思います。
使用する工具
①マーカーペン
ボルトとナットにマーキングして締め付け位置がわかるようにします。
②ソケット
リアホイールナットに使用します。
今回の車両では30mmを使用します。
レンチは長すぎて写真にありませんが、リアホイールナットの締付けトルクが100N•m以上なら1m以上の長さのあるレンチをお勧めします。
③ラジオペンチ
リアブレーキパッドを外す必要がある場合に要ります。
④14mmレンチ
メガネレンチでもOKです。
チェーンを調整するナットに使用します。
必要サイズは車種によります。
⑤プラスチックハンマー
アクスルシャフトの抜き差しに。
全車種必要です。
鉄ハンマーはアクスルシャフトを凹ませるのでNGです。
部品の名前
ブレーキ部品の名前は色々ありますが、本記事では部品名を以下の写真の通り表記します。
赤丸のナットはチェーンの張りを調整する役目があります。チェーンアジャスタと呼称します。
トルクレンチがない場合は、あらかじめナットにマーキングします。
締め付けるときにマークを合わせればザックリの締め付けトルクが一致します。
バラす前には是非マーキングして下さい。
あらかじめチェーンの張りを確認する
バラす前にチェーンの張りを確認しておきます。
ホイールを組み付けた後に適正な張り具合が分からなくなるのを防ぐためです。
左右のチェーンアジャスターの目盛りをチェックしておきます。
目盛りは左右同じ位置になければいけません。
目盛はザックリした目印なので、アジャスターボルトが外に出ている車種はその長さを測っておきます。
この長さを左右でピッタリに合わせればアライメントを真っ直ぐにできます。
リアブレーキを外す
リアブレーキキャリパーを外せる車種はキャリパーをとめている2本のボルトを外して邪魔でない所に避けておきます。
キャリパーを外せない車種(片押しキャリパー装着車)は、ホイールが外し易くなるようにパッドだけでも外します。
キャリパーをチェーンの方向に押し込みます。
ロックピンが2本あるので、ラジオペンチで外します。
スライドピストンを引き抜きます。
リアブレーキパッドが外れます。
リアアクスルシャフトを外す
左右のチェーンアジャスターナット(もしくはボルト)を反時計回りに回して180°緩めます。
アクスルナットを緩めます。
旧世代モンスターや空冷SS系は簡単に緩みますが、それ以降の車種は固く締まっています。
バイクが倒れるのを防止する為、タイヤが地面に着いた状態で反時計回りにナットを回して緩めます。
ナットを回しても緩む感じが無い場合はアクスルシャフトが供回りしています。
アクスルシャフトが回らないように押さえつつナットを緩めましょう。
ナットが無事外れました。
強力な電動インパクトレンチや空気圧式インパクトが有れば気合いで外してもOKです。
ナットが外れたら、リアホイールをジャッキアップします。
ここはレーシングスタンドもしくはセンタースタンドを使用しても構いません。
(私はスタンドを持っていないので…)
今回は右ステップの下に一斗缶を噛ませてホイールを浮かせました。
アクスルシャフトを引き抜きます。
リアホイールを持ち上げながらシャフトを引くと抜き易くなります。
リアホイールを外す
左右のチェーンアジャスターを引き抜きます。
ドライブチェーンをスプロケットから外します。
チェーンを掴んで後ろに引き、左側に預けましょう。チェーンを置くと部品に傷が入るので布で保護します。
一旦、キャリパーサポート(リアブレーキキャリパーを取り付ける部品)に注目して下さい。
赤丸の部分ですが、キャリパーサポートの穴にスイングアームから出ているピンが入ります。組付ける時には同じ形になるように気をつけましょう。
車種にもよりますが、忘れがちなポイントです。
キャリパーサポートをピンから引き抜いて外します。アクスルシャフトを抜くとホイール周りのスペースが空きサポートが外し易くなります。
リアホイールを後ろに引き抜きます。
フェンダーレスであればホイールを抜く作業は楽ですが、ノーマルフェンダーだと邪魔して外しにくいかも…
スプロケットはホイールを外したら引き抜くだけで外せます。
タイヤ交換するときにこれを外しておかないと脱落して思わぬ怪我に繋がるかも…
外したついでに掃除しても良いと思います。
スプロケットがホイールに刺さるピンの部分は錆びやすいので、この機会に錆び取りしてグリスを塗ると良いでしょう。
タイヤが回るときの「ギシギシ」音が改善することもあります。
スプロケットにはカラーが入っています。
作業中、知らないうちに脱落し易いので、スプロケットを外したときはカラーの位置と向きを覚えておきましょう。
カラーが脱落したことに気付かずに組み上げるとベアリングが破損、最悪事故に繋がります。
ホイールベアリングに損傷が無いか確認します。
アクスルシャフトの刺さる穴(ベアリング)に指を入れて回してみます。
抵抗無く回れば正常ですが、ゴリゴリするような感触があれば異常。ベアリング交換が必要になります。
スプロケットにもベアリングが入っているので確認した方が良いでしょう。
ホイールを組み付ける
ホイールを元の場所に配置したら、リアブレーキキャリパーサポートから先に差し込みます。
サポートの穴にスイングアームのピンが入るのを忘れないように。
ドライブチェーンをスプロケットにかけます。
ホイールとスイングアームの間にカラーが入る車種もあるのでお忘れなく。
左右のチェーンアジャスターを挿入します。
アクスルシャフトを貫通するまで差し込みます。
アクスルシャフトの先端部は[チェーンアジャスター、スイングアーム、スプロケット、カラー、ホイール、キャリパーサポート]と数々の部品を通過します。
部品ごとに段差があり、その度に先端部が段に突っ掛かり差し込めなくなるので、熱くならずに冷静着実にハンマーで優しく叩きこむのがポイントです。
このようにアクスルシャフトが貫通してネジ山が出たらナットを手で締めます。
このとき、タイヤを前に押しながらアクスルシャフトのナットを手締めしてください。
ジャッキダウンもしくはスタンドを外してからアクスルシャフトナットを本締めします。
トルクレンチが無い場合はあらかじめナットにマーキングした位置まで締め込みます。
実際、ホイールが真っ直ぐに装着されていれば規定トルクで締めるとマーキングはピタリと一致します。
チェーンの張りを合わせる
ナットを本締めしたら、チェーンアジャスターナットをマーキングが合うまで締め込みます。
張りを確認したところ、ちょっと緩かったです。
アクスルナットを緩めます。
手でナットが回せる程度まで緩めたら再び本締めします。
すると、張りが少し強くなり適正値になりました。
このように、
アクスルナットを本締めした後にチェーンアジャスターを張り方向に締め、ナットを一旦緩めてから本締めするとチェーンを張ることができます。
ほとんどのバイクで応用可能ですが、899もしくは959パニガーレはチェーンアジャスター周りの精度が高いためこの方法は使えません。
今回は楽にチェーンの張りを合わせる方法で行いましたが、本来のチェーンの張りの確認方法はこちらの記事を参考にして下さい。
また、せっかくなのでチェーンに給油や掃除をした方はこちらもご参考ください。
チェーンの張りが適正になったらアジャスターナットを張り方向に90°増し締めします。
左右の目盛りが合っていることも確認してください。
リアブレーキを組み上げ、リアブレーキペダルを固くなるまで何度か踏みます。
最後にもう一度リアタイヤを浮かせ、ホイールがスムーズに回転するか確認します。
カラーが入っていなかったりすると回転が重くなります。
作業後は周りを掃除し、組み忘れた部品が無いかよく確認しましょう。
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