ドゥカティのタイミングベルトの張り具合を点検するには、
特殊工具や専用の計測器が必要とされています。
しかし、それらを入手するには費用やライセンス面の壁があります。
今回は、一般的に入手可能なツールで点検する方法をお届けします。
タイミングベルトを交換する方法はこちらで紹介しています。
この投稿はディーラーメカニック以外の整備士に向けた内容にしています。
例えば、自分でバイクの整備ができるアマチュアメカニックや、ディーラー以外で特殊工具が手元に無いバイク屋さんです。
実は私がドゥカティのディーラーを退職する際に、店の設備が無くてもエンジンの整備ができるよう、当初は自分のために探した方法です。
ベルトの張力(張り具合)をチェックする方法
①スマートフォンのアプリ(iOS)のSonic Toolsをインストールする
②スマホ対応のマイクを手に入れる
1,000円程度の安価なものでOKです。
本当に静かな環境で作業するのであればマイクも不要です。
(ただし、片手が塞がるのと確実性に疑問が…)
③Sonic Toolsでこの画面を開く
④タイミングベルトを測定タイミングにしてから、この位置にマイクを設置する。
(測定条件はエンジン冷間時です)
マイクの設置箇所はクランクシャフト側プーリーの根本寄りで、テンショナーのローラーのある側です。
静かな環境で作業して下さい。
前バンクのタイミングベルトを測定するときは前バンクシリンダーを圧縮上死点に、
後ろバンクのタイミングベルトを測定する時も同様に後ろバンクシリンダーを圧縮上死点にして下さい。
⑤指でベルトを強めにはじく。
少しぐらい弱く弾いても測定値に影響はありませんが、強めに弾く方が正確な値になりやすいです。
⑥弾いたときの最大周波数(Hz)が、ベルトの張力になります。
(FTFゲインはデフォルト設定にて)
弾いた瞬間しか最大値が読み取れないので、よく目を凝らして下さい。
張力測定の方法は以上です。
張りの規定値
サービスマニュアルで規定されている値を表にしました。
同じ車種でも年代によって規定値は異なりますが、近年に定められた値の方が正しい値になります。
※冷間時、各バンク圧縮上死点が基準です。
メンテナンス時とは、新品に交換してから一度走行したベルトのことです。新品時に上記の値で張れば自然とメンテナンス時の張りの規定値に落ち着きます。
ツールについて
ドゥカティのディーラーではTEXA(テクサ)というメーカーの、光学式のベルト張力計測器を使用します。以前は専門店しか入手できませんでしたが、現在では「マルク」という素晴らしいお店があるおかげで入手できます。
ただし9万円近くする代物になります。(それでも買えるだけ有難いですが…)
Sonic Toolsというアプリは、
色々試した中で最も正確にタイミングベルトの張りを測ることができます。
実際にTEXAと測定値を比較したことがありますが、殆ど数値に差が無く、TEXAの代用としてディーラーでも使えそうでした。
デメリットとしては、ベルトを指で弾いた時の音で測るのでTEXAと違い、静かな環境でしか使用出来ないし瞬間表示される数値を読み取るのが少し難しいところでしょうか。
他にも、タイミングベルトの張力を測るアプリがベルトメーカーからリリースされていますが、ベルトの種類等を設定する必要があり専門的すぎて難解。
しかもTEXAと比較しても数値が合いません。
ギターのチューニングアプリも片っ端から試しましたが、やはり測定値が乖離します。
一定の張力で張られた弦を弾いたときの振動数(音波)をマイクで拾って測定する。という原理はギターと同じ筈ですが…
以前はタイミングベルトの張りを見るには純正のツールに頼るしか無く、入手できない場合は「こんな感じかな?」で張っていたショップもあるようです。
しかしそれだとドライブチェーンを張りすぎた時の様に、ベルトを掛けているプーリーを保持するベアリングに負担がかかり、ベアリングを損傷しエンジンから異音がするようになったり、最悪はベルトが切れてエンジンブローすることがあります。
いずれにしてもエンジンO/H沙汰になります。
空冷は感覚頼りでもいけますが、水冷になると本当にシビアなので手の感覚で張ってはいけません。
アプリを使う方法は自分自身で正確性を検証していますが、私はアプリの開発者ではありませんし、「探した中でベスト」というだけです。
試す時はくれぐれも自己責任でお願いします。
タイミングベルトの交換時期
車種によりますが、
24,000kmごとor車検3回に一回交換すべきです。
水冷のムルティストラーダやディアベルは30,000kmごとの場合もありますが、オーナーズマニュアルで確認してください。
ベルトの外見で交換時期を判断する方法もあります。
ベルト表面の赤い文字が擦れて消えていたら交換が必要です。
また、小石などが噛み込んで筋状に傷が入っている場合も交換した方が良いです。
ドゥカティのベルトを張るテンショナーはマニュアル式で、自動的に張りを調整する機能はありません。
張り点検&調整時期は車検ごとと考えて良いでしょう。
もちろん気になる方は3000kmスパンで点検しても良いと思います。
エンジンメンテナンスの中でも特に重要な部品なのでやらなくて良いことは無いですよ?
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