バイクの整備士の知識、公開します。

ドゥカティの点検の仕方

2022/02/15
 
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バイク整備士歴13年。 これまでの知識と経験、ノウハウを読者の皆様に公開しています。 バイクに関してお困りの方に少しでもお役に立てれば幸いです。 ぜひプロフィール欄もご覧ください!
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繊細なイタリア車 ドゥカティは定期的な点検が欠かせません。

大切な高級車だからこそ、不具合はできるだけ早めに見つけましょう。
確実性を求めるならディーラーに依頼して点検を受けるべきですが、時には自分で点検する機会もあると思います。
今回はドゥカティに特化した点検の仕方を公開していきます。

バイクの基本情報を把握する

 

車体番号

まずはご自分のバイクの基本情報を把握しましょう。

ドゥカティの車体番号は長いアルファベットが並びますが、実はちゃんと意味があります。

スクランブラーはタイ生産で表記が違うので「ML0」等から始まります。
「AA」は後の世代では「JA」日本仕様に変わっていきます。
せめて年式と何台目かがわかれば初期ロットか後期ロットか判別できます。
一般に、初期ロットではエンジンや電気系のトラブルが多い反面、中古市場では買いやすくなります。
後期ロットは高額になる場合がありますが、比較的細かなトラブルは少なめです。

 

車検証

点検する上で車検有効期限の確認は意外と大事です。
ご自身のバイクの車検がいつまで有効かしっかりと確認しておきましょう。

自分で車検を受ける場合、記載されている「長さ」「幅」「高さ」が実際と3cm以上違う場合は構造変更という検査が必要になります。
この検査を受けるには、バイクのナンバープレートが受験する陸運支局と同じ管轄である必要があります。
引っ越した後にナンバープレートの変更をしていない場合は、車検を受ける前に住所変更の手続きをしておきましょう。
手続きの問い合わせ先は、ご自身の住民票がある管轄地域の陸運支局です。

 

電気系を点検する

電気系は、異常が無いかの点検なら簡単にできます。
順番に押さえていきましょう。

 

灯火類

エンジンをかけて、灯火類(ランプ)が点くか確認します。意外と故障していることがあります。

  • ヘッドライト
    ハイとローは点灯するか?パッシングもできるか?ハイビームインジケーターは点灯するか?
  • ウィンカー
    後ろ側が切れていると気がつかない場合があります。ハザードがあれば動作確認します。
  • テールランプ
    走行中に常に点灯している後ろの赤いランプ。玉切れもしばしば有り。
  • ナンバー灯
    ナンバーを照らす白いランプ。LEDと電球タイプがありますが、電球はすぐに切れる…
    ムルティストラーダやハイパーモタードのナンバー灯のプラスチックカバーは外すときに必ず割れます。
  • ブレーキランプ
    前後ブレーキをかけてランプが点灯するか確認します。反応が無いときはとりあえずバルブを外して玉切れでないか確認。
    脱着することで接触不良が直ることもあります。
    スイッチの配線が抜けていないか?配線が断線していないか?
    スイッチ内部の接触不良もあるので、外してパーツクリーナで掃除すると直る場合もあります。
    フロントブレーキスイッチなら通販で買えるオムロン製のマイクロスイッチが使える場合もあります。
    リアブレーキスイッチは、11mmのメガネレンチを使います。締めすぎると動作しなくなるので要注意。緩めるだけで直ることもあります。
  • ホーン
    普段から使っていないと鳴らなくなることがあります。
    スイッチを強く押すか、左ハンドルスイッチの中にパーツクリーナを大量噴射します。
    パーツクリーナーは樹脂を白くすることがあるので要注意!
    もしくはホーン自体にホースや配線が接触していると鳴らなくなることがあります。
    ハーレーのホーンは多少の接触でも平気ですが、ドゥカティのホーンはちょっとした接触にも敏感です。
  • ヘッドライトのポジションランプ
    切れていても車検には影響ないですが、ヨーロッパ基準ではポジションランプ(ヘッドライトが切れていても存在をアピールできるランプ)が義務化されています。(日本でもそろそろ義務化されます)
    点いていなくても良いですが、念のため確認しましょう。
    ちなみに1098系のポジションランプの電球はヨーロッパ仕様で、普通は純正パーツとしてディーラーで注文しないと手に入りません。そして非常に高いです。
    どなたかAmazonあたりで買えたら教えてください。

バッテリー

エンジンがかかっているとき、バッテリーは電力を使用していきますがエンジン内蔵の発電機(オルタネーター)と電圧制御装置(レギュレータ)によって常に充電されています。
ホームセンターでテスターを購入し、バッテリーのプラスとマイナス端子にプローブを当てて電圧を確認します。

エンジンがかかっているときにバッテリーにかかっている電圧(充電圧と言います)は13~14Vが適正で、アイドリングでも回転数が高いときでも一定の電圧であることが大事です。

13~14V以外の場合はバッテリーかレギュレータの不良を疑います。
バッテリーの寿命が近かったり、充電が少ない場合が充電圧が少なめになります。
リチウムイオンバッテリーを装着していて、バイクとの相性が良くない場合は15V台になります。

レギュレータの寿命が近いときは次の特徴があります。

  • 充電圧がうなぎ登りに上がっていく
  • レギュレーター背面の黒い部分が溶けている(対策前の片側フィンタイプ)

その他、こちらの記事も参考にしてください。
電圧が上がりすぎた場合の弊害は、

  1. 電球が切れやすくなる
  2. メーターが壊れやすくなる
  3. コンピュータが壊れやすくなる
  4. リチウムイオンバッテリーを装着していたらバッテリーが壊れやすくなる

ノーマルの鉛バッテリーを装着している場合は、それ自体へのダメージはそれ程無いですが、長時間過電圧がかかると餅のように膨らんで故障する場合があります。
そもそも鉛バッテリーは充電器で満充電にするときは過電圧をかけるものです。
リチウムイオンバッテリーが餅のように膨らんだ場合は爆発or発火するらしいので取り外したら近寄らないようにしましょう。

その他、バッテリーの端子が緩んでいないか確認しましょう。
端子を締める時はドライバーではなく、レンチを使用してしっかりと。
端子が緩んでいるとスターターが回らなくなったり、レギュレータが故障したり、プラス配線の太い部分が焼けることがあります。

ちなみにトラックのパワーゲートはマイナス端子が緩んでいるだけで動かなくなることがあると聞いたことがあります。

バッテリーをゴムで固定しているバンドがあるはずです。
ゴムを介していなくても、とにかくバッテリーは固定されていないければいけません。
そのまま走行するとバッテリーが揺れて車体側のバッテリー端子が痛んでしまい、電気通路が細くなって過電圧が流れレギュレーターがパンクしプラス配線が焼けて火災になります。
エンジンが止まるだけならまだしも、火だるまになっては大変です。

全ての部品、小さなボルトから他愛もないゴムバンドまで全てには役割があります。
それぞれの部品の役割を把握し異常が無いか確認し、故障の種を摘む。
これが点検の真骨頂です。

安全装置

以下の動作をするか確認しましょう。

  • ギアがニュートラル以外でサイドスタンドが出ているときは絶対にエンジンがかからない。
  • ニュートラル以外でスタンドを閉まっているときにクラッチを握るとエンジンがかかる。
  • エンジンがかかっていて、スタンドが出ていて、クラッチを握った状態で1速に入れるとエンジンが止まる。
  • エンジンがかかっていて、クラッチを握って1速に入れてもエンジンは止まらない

多くのバイクではこの動作ができるはずです。
できない場合はクラッチレバーの根元にスイッチが付いていないか、壊れているか、そもそも安全装置が無いか。
90年代の空冷モデルではサイドスタンド以外に安全装置はついていない場合もあります。
996はニュートラルに入っていてもスタンドが出ているときはセルが回ってもエンジンがかからない仕様になっています。
「エンジンがかからない!?」と思っても慌てずに、バイクに跨ってスタンドを閉まってから始動しましょう。

ちなみに、ZZR1100等のカワサキ車は左側に転倒するとサイドスタンドのスイッチが曲がってしまい安全装置が常時作動し走れなくなることがあります。
カワサキユーザーは出先で転倒した後にエンジンがかからなくなった時はスタンドの根元のスイッチも見てみましょう。
ドゥカティでも打ち所が悪いとサイドスタンドスイッチが破損する場合があります。

それと、ドゥカティでもオートシフターが純正で装着されている車種はクラッチスイッチを絶対にキャンセルしないで下さい。
ラジアルポンプにカスタムしてクラッチスイッチが装着できなくなり配線を常時ショートさせてしまうと、コンピュータがクラッチを切っていると判断しオートシフターが作動しなくなる他、クラッチを握っている間は燃調や点火時期をずらすように制御しているのでエンジンの調子が悪くなります。

そもそもノーマルのセミラジアルポンプは1,000万クラスのレジェーラでさえ継続採用するほどの性能があるので、あえてレーシングラジアルポンプに交換しても性能アップはしません。
見た目にこだわりがあって、フロントブレーキにリモートアジャスターを装着したいのであれば別ですが、迷っている程度ならカスタムはブレーキパッドやクラッチレリーズ、ブレーキディスクの交換に留めておいた方が良いです。

 

 

 

 

キー関連を点検する

キーとは、お手持ちの鍵です。これも意外と大事。

ハンドルロック

ハンドルロックがかからないと車検に合格しません。
また、ハンドルをめいっぱい切った時にカウルやタンクに手が挟まる場合もアウトです。
挟まり具合がソフトタッチ程度なら通ることもありますが、痛い感じにヒットするとダメです。
ドゥカティはハンドル切れ角をアンダーブラケット根元近辺のネジで調整できる反面、立ちごけや転倒でストッパーが曲がります。
普段からハンドルロックを使っていない方は点検時にしっかりと確認しましょう。

パニガーレは立ちごけするだけでハンドルストッパーが無くなります。
そのままだとハンドルがタンクに当たって車検に通らない可能性があるので、ディーラー系のショップが販売しているフロントフォークに装着するストッパーを取り付けましょう。
要は手が挟まってケガをしない状態で、ハンドルロックをかけることができればOKです。

ちなみにハンドル右切りでもロックできる車種もありますが、基本的に左か右の片方だけでもロックできれば良いです。

鍵のゴリゴリ感

鍵穴に埃が詰まっていると、鍵を差し込んだ時に重い感じがすることがあります。
回りにくい鍵を無理に回すと曲がってしまうので、シリコンスプレーを鍵穴に軽く噴射して中の動きを良くしましょう。

ドゥカティはそれほどでもないですが、70~80年代の国産旧車は刺す方のキーの山が丸まっていることがあります。
そのまま悪化すると、キーONでも鍵が外れたりキーを回しにくくなります。
古い4輪車でも長年使っていると鍵山が丸くなって不意のトラブルに繋がります。
古いタイプの簡単な鍵ならイオンあたりでスペアキーを作れます。

シートの下に物を詰め込んだりETCが無理気味に入っていると、シートロックを開ける時に鍵に無理な力がかかります。
シートの後半部(2人乗りするあたりの位置)を強く叩き、同時にキーを回すとロックが外れやすくなります。

タンクロック

鍵というより、タンクキャップの下の部分のメンテナンスです。

キャップの下に穴が二か所ある場合は、両方とも空気が通るか確認します。
空気はエアガンを使わなくても、ホースを差し込んで息を吹き込み少しでも空気が通ればひとまずOK

2つある穴の片方は、入れすぎて溢れたガソリンを地面に逃がすホースに繋がっています。
これが詰まると洗車や雨でキャップ周辺に溜まった水がタンクの中に侵入しガソリンに混入、エンジン不調になります。
エンジン不調があって詰まっている場合は灯油ポンプをタンクの奥まで突っ込んでガソリンを抜いてみてください。
抜いたガソリンに玉状の水が沈んでいれば確実に不調の原因です。

もう一方の穴は、タンク内の圧力を逃がす空気穴です。
高速道路を走っていてエンジンが止まってしまう場合はこの空気穴が詰まっていたり、その先のホースが潰れている場合が原因になります。
これは、長距離を一気に走ると燃料が減っていき、空気穴が詰まっているとタンクの中の気圧が薄くなってガソリンをポンプで送れなくなるためです。
タンクキャップを開けたときに「シュッ」と音がする時は要注意です。

アメリカ車や、ヨーロッパ車でもE4(ユーロフォー)規制の入っているバイクは絶対この空気穴に圧縮空気(エアガン)を吹き込まないで下さい。
空気穴の先が「チャコールキャニスター」という有害ガスを排除する部品に繋がっていて、無理に空気を送ると壊れてしまいます。
これを装着している一部のバイクではタンクを空けると「シュッ」音がする場合がありますが、これは異常ではありません。
水冷のハイパーモタードはエンジン停止後しばらくの間、不気味な独り言を奏でることがありますが、これはタンクの中の空気を少しづつ外部に送っている音です。決してバイクが呪いの呻きを放っているわけではありません。

タンクキャップの中が汚れているからといって、無計画にキャップの台座を外してはいけません。
タンクとの間にパッキンがある場合再使用できない可能性がある他、ボルトをタンクの中に落とすと大事になります。

エアクリーナーを点検する

エアクリーナーは定期的に掃除したところですが、旧型のモンスター以外は難しいです。走行距離1万kmごとの清掃でも十分です。
スパークプラグの焼け色が異常な場合はエアエレメントの異常があるかもしれません。

画像のタイプには無いですが、多くの場合は片面に金属網が付いています。網のある方がエンジン側になります。

916と999系はエアエレメントがスポンジタイプで、燃料ガスの成分でボロボロになっていることが多々あります。
汚れよりもエアエレメントの劣化により交換する場合が多く、これらは車検毎の点検をお勧めします。

エアエレメントに手を出すときは、エアクリーナーボックスの中にゴミを落とさないように気を付けてください。エンジンブローの原因になります。

走行距離3万km前後でオフロード走行をしておらず、日本の普通の道路しか走っていなければ無理に掃除しなくても大丈夫です。
自分でやるのが難しいときはディーラーに依頼しましょう。

尚、スクランブラーはエンジン前側にあるレギュレータを外してエアクリーナーボックスのネジを全て外して割る必要があります。
エアクリーナーボックスと外装品をとめるボルトと、エアエレメントをボックス裏側に固定するボルトは高確率で固着していて外せません。
バイクを工場で組み立てる人がネジにグリスを塗ってくれていれば良いのですが、仕方ありません。
点検で外す人がネジ山をやらかしても責めないでください。

スパークプラグを点検する

ドゥカティの場合、空冷なら簡単に外せるので車検毎に点検します。
空冷は一般的に、プラグレンチのソケットは16mm Cタイプを使用します。
ノーマルプラグなら先端を真鍮ブラシ、イリジウムプラグならナイロンブラシで掃除してパーツクリーナを吹き付けてススを取ります。
ネジ山にグリスを塗布してはいけないという話はよく聞きますが、ハーレーではプラグのネジ部に「スレッドコンパウンド」銅成分のグリスを塗布する指示があります。
締めすぎてネジ山やプラグを壊すのは考え物ですが、塗布すること自体は悪いことではありません。

プラグの先端の電極の角が丸くなっている場合は早めに交換しましょう。
新品にしたばかりのプラグで電極が角ばっていて、掃除しても調子が悪い場合があります。
プラグのコンディションは見た目だけでは判断できないので、エンジンの調子が悪ければひとまずプラグ交換が鉄則です。

プラグを締めるときは必ず手で回し、最初からレンチを使うのはNG。それをやって大丈夫なのはプロだけです。
新品プラグを締め付けるときは、

  1. プラグをネジ山全部が隠れるまで手で回す。
  2. それからレンチでプラグを締める
  3. 締める力が急に重くなる
  4. そこから「キュッ」と締める

プラグのネジ山には鉄製のガスケットリングがあり、しっかり潰れて初めて気密性を発揮するようになります。
ガスケットリングがエンジンに接触すると、レンチに少し重い感触が伝わってきます。
ガスケットを最後まで潰してから最後にひと締めする感覚で締めないとプラグがゆるゆるになってしまい、圧縮不良やネジ山へのカーボン堆積、プラグのアース不良が発生してエンジントラブルになります。
特にサンデーメカニックや、プロでも経験の浅い人は必ずと言っていいほどプラグゆるゆるです。
新品プラグを装着したら後日でもいいのでレンチで締め直しましょう。

水冷でも、1098が登場した以降のモデルはNGKの「MAR9AーJ」や「MAR10AーJ」といった番手のプラグを使用しています。
ソケットは14mmを使用しますが、アストロプロダクツやストレートで購入できます。
1098は、ダイレクトイグニッション(プラグキャップ)を外すときに破損しやすいので気をつけてください。
普通のゴムタイプのプラグキャップ(イグニッションコイルが別体になっているタイプ)で、エンジンの中で固着して外しにくいときは17か19mmのスパナをキャップのブーツの下に噛ませてテコの原理で引き抜きます。

パニガーレ(2気筒)の前側のプラグを外すときはラジエターをずらします。点検窓が意味のない位置にあるのは、設計変更でプラグホールの位置と窓の位置がずれたためで、その名残で存在しているだけです。
後ろ側はタンク後部のブラケットを外すことで、タンクをリフトアップできるので比較的簡単です。
リフトアップするとタンク右前方にあるホースが外れます。外れなくてもタンクを戻すとホースが曲がります。
そのまま放置すると最悪の場合、火災やエンジンストールの原因になるのでリフトアップ後は必ずホースを差し込み曲がりを戻しましょう。
その為にはフレーム右側にあるECUとマウントケース一式を外して手が入るようにします。

基本的に2万km以上は大丈夫なプラグなので、不調が無く距離も大したこと無い場合は点検は不要です。
これらのプラグにはイリジウムなどの社外プラグは無く、純正のみです。
電極がかなり消耗していても平気で走ることができるプラグなので、交換したい場合は急がずとも長い目で見て注文しましょう。

749Rはとんでもないレーシングプラグを使用しているので、交換する場合はドゥカティ純正部品としてディーラーに注文します。

 

 

 

 

内圧コントロールバルブを清掃する

内圧コントロールバルブとは、エンジンの後方右側のリアブレーキのタンクの近くにある丸い部品です。
これはエンジンの下半分(腰下)の中で発生したガス(ブローバイガス)力を調整(コントロール)する弁(バルブ)です。

マフラーからは排気ガスが出ていますが、これと同じようなテンポでエンジンの内部でもガスが発生しています。
仮にエンジンを完全密閉してガスを閉じ込めてしまうと、エンジンの中の圧力が高くなりすぎて破裂したり各部品の動きが悪くなってしまいます。
そのガスをこのバルブから外部に適切に排除し、外からは空気が逆流入しないようにする部品が内圧コントロールバルブです。

ノーマルは黒くて素っ気ないプラスチックの部品ですが、これは滅多に故障しないのでノーメンテナンスで大丈夫です。

これをカスタムパーツに交換すると、弁の能力が強化されてエンジンの性格ががらりと変わり、非常に乗りやすくなります。
ただし高性能になる反面、2年ごとのメンテナンスが必要になります。
バルブの中をガソリンとオイルのミストが通過しているのですが、それが内部の弁の動きを悪くしてエンジン不調を引き起こします。

メンテナンスするときはバルブ本体を破損しないように気を付けながら、ウォーターポンププライヤー等の工具でくわえて、反時計回りに回してネジと同じ要領で外します。
外したら内部にパーツクリーナをたっぷり噴射して乾燥させ、内部の弁が動きやすくなるようにします。
バルブの中に息を吹き込んで一方通行に空気が流れるようになればOKです。

仮に弁が壊れて両方向に空気が流れるようになったとしても、若干の不調はあってもエンジンにダメージが入ることは無いでしょう。
古いバイクではそもそも内圧コントロールバルブは無く、エンジンから直接伸ばしたホースをエアクリーナーに繋いでいます。
内圧コントロールバルブを使った方が、エンジンのパワーロスを減らすことができて性能が良くなるから装着しているのです。

ちなみホースが途中で折れ曲がったり潰れていても意外と空気の流れは確保できています。
完全密閉する勢いで潰れていたら話は別ですが、1098系のブローバイホースは途中で潰れるような形で通路が細くなっています。
ホース用のスペースが無いから仕方なくそうなっていると思います。
ホースに関しては亀裂が入っているかどうかの点検をしておけばOKで、取り回しや潰れているかどうかはそこまで気にしなくても大丈夫そうです。

ホースの中間に取り付けるタイプの内圧コントロールバルブがあります。
これはどんなバイクやエンジンでも装着できるのですが、取り付ける向きを間違えると大惨事になります。

もし正しくない向きに装着するとブローバイガスがエンジンの外に出ることが出来なくなります。
その状態で出力全開で走るとエンジン内の圧力がどんどん高まり、オイルの点検窓がガスの圧力で割れて大量のオイルが噴出します。
結果、オイルが道路に飛散し後続車をスリップの危険にさらします。
もちろん自分のエンジンは壊れますが、それよりも他人の命を危険にさらします。

内圧コントロールバルブは確実に性能アップする素晴らしいパーツですが、組み付けを間違えると非常に危険です。
装着するときは販売店から新品を買い、取扱説明書をしっかり読んで指示通りに取り付けましょう。

 

補足ですが、パニガーレ(V2とV4)には内圧コントロールバルブはありません。
エンジンの中にポンプがあり、内圧を強制的にエアクリーナーに逃がす構造になっています。
そこまでしているからこそ、パニガーレは速いのです。

 

タイミングベルトを点検する

タイミングベルトはドゥカティの命。これが切れるとエンジンは終わってしまいます。

点検交換の流れはこちらの記事を参考にしてください。

点検する際のポイント挙げます。

  1. ベルトにダメージが無いか?
    正常なベルトの表面はつるつるとしています。スジ状の溝が入っている場合、ベルトカバーに入り込んだ小石を噛みこんでベルトを傷つけていいます。
  2. ベルトは劣化していないか?
    古くなっていても見た目では判断できません。ベルトは5年スパンでの交換が推奨です。
    車検2~3回に1回のペースで交換しましょう。
    5年過ぎたら即、切れるわけではありません。
    走行距離が年間3,000km程度までなら6年スパンでの交換でも良いでしょう。(ただし定期的な正しい張り調整は必要)
    8~10年放置していると本当に危険です。
    交換歴が不明ならすぐに交換するのがベターでしょう。
  3. ベルトにテンションを加えるベアリングは正常か?
    空冷の場合、このベアリングがゴリゴリになってベルトにダメージが入ることがあります。
    装着されているベアリングが普通のボールベアリングを2個重ねたタイプは要注意。定期点検の度にしっかりと見ておく必要があります。
    このベアリングは後に対策されて、2個重ねたタイプがドッキングして、1個の細長い特殊な形状のベアリングになりました。
    それからはトラブルは滅多にありません。
    水冷のベアリングもゴリゴリ感が発生することがあります。
    エンジンの熱を受けながらハイスピードで回転するベアリング(しかもグリス潤滑)なので、気を付けたいポイントです。
  4. ベルト周りのボルトが緩んでいないか?
    カムシャフト軸のプーリーにある3本のボルトが緩むとエンジンブローします。
    私は過去にやらかして848のバルブを曲げました。
    細いネジなので折らないように気を付けたいところですが、M6ネジなら14Nmで締めましょう。(通常よりも強め)

 

空冷のベルトの張りを調整するときのコツ

赤丸のボルト2本を微妙に緩めてから☆の位置を棒で叩くとベルトの張りを強くすることが出来ます。
この2本のボルトはベルトにテンションを加えるベアリングを保持するブラケットの位置決めボルトです。
完全に緩めると「ブラン」となってしまい張り調整がしにくくなります。
そこでブラケットがフリーになるかならないか程度まで緩めてから、ブラケットの端を張る方向に叩くと簡単にテンションの調整ができます。
どうしても難しい場合はブラケットとボルトを一度完全に外し、ボルトとエンジンの接触部を真鍮ブラシで磨いてからグリスを薄く塗ります。
すると簡単にテンションを決めることが出来るようになります。
作業しやすくするために塗るグリスなので、本当に薄く塗るだけで十分です。
はみ出たグリスがベルトにかかると良くないので気をつけてください。

バルブタイミングは、張りを調整する際には支障が出る程ずれないので気にしないでも大丈夫です。
水冷の場合も同様にテンションの調整だけなら特殊工具は必要なく工夫で乗り切れます。
今は水冷の教材が無いので調整方法は機会があればアップします。

ベルトのテンションを測るときのピストンの位置

ベルトテンション(張り)を測るには、それぞれのシリンダーが圧縮上死点である必要があります。
空冷/水冷問わず殆どのドゥカティ車で共通の確認方法を説明します。

前バンク(ホリゾンタル)シリンダーを圧縮上死点にするには、クランクシャフト側のタイミングベルトプーリーのケガキ線とクラッチカバー側の線が一致している状態にします。
Xディアベルやムルティストラーダ1260以外は「この位置=前バンクが圧縮上死点」を信じてOKです。

次に、後ろバンクを圧縮上死点にする際の技です。

プーリーに新たにマーキングした位置とクラッチカバーの線が一致する時に、後ろバンクが圧縮上死点になります。
クランクシャフトを回転させるには特殊工具を使用する方法もありますが、無ければスパークプラグを外してからギアを6速に入れ、後輪タイヤを回す方法もあります。

正規には、特殊工具を使用してクランクシャフトを正方向(エンジンがかかっているときに回転する方向)に270°回転すると後ろバンクが圧縮上死点になります。

張り調整するときの注意点

タイミングベルトを脱着するときはクランクシャフトとカムシャフトの位置を厳密に合わせますが、張り調整なら数°のアバウトさは許容します。
念のため、張り確認する方のピストンが一番高い位置にあるかプラグホールから覗いて確認しましょう。
同じピストン上死点でも、バルブオーバーラップと間違えて張ってしまうと緩くなるので、360°づつ回転させてから張りが緩い方を圧縮上死点と判断する方法も有効です。
一度張り調整したらクランクシャフトを何周か回して、調整した張りにズレが発生していないか確認し、変わっているようなら再調整します。

ベルトを交換せずに張り調整するときは、基本的には空冷は100Hz 水冷は80Hz 前後バンク共通で冷間時に点検/調整します。

 

 

 

排気ガス濃度を点検する

排気ガステスターが無いとできない作業ですが、ドゥカティは排ガス濃度の点検と調整は大事です。
車検でも年式によって通過できる濃度基準があります。

排気ガスの成分ついて

バイクから排出されるガスの成分には主に以下があります。

  • HC
    炭化水素。ガソリンの燃え残り(未燃焼ガス)。ガソリンの主成分は水素と炭素の化合物で、それがHC(炭化水素)です。
    HCが多い場合は混合比が合っていないか、ピストンリングの摩耗やバルブの状態悪化、クロージングバルブクリアランスの不適を疑います。
    エンジンが冷えているときは多く発生します。原因は、シリンダーやヘッドの壁が冷えていて壁付近の混合気の温度が上がらず燃焼できないためです。(専門用語でクエンチングと言います。)
    燃焼できなかった混合気はガソリンの主成分そのままでマフラーから排出され、HCとして検知されます。
    冷えているときは多くのガソリンが未燃焼となってしまうのでエンジンパワーが発生せず、アイドリングが難しくなります。
    そこで、冷えているときはチョークを引いたりコンピューターセッティングで多くのガソリンをエンジンに送ります。
    暖気をせずに走り出す(アクセルを開ける)と大量のHCを大気にまき散らすことになり、マフラー内の触媒も早く傷んでしまいます。
    冷間時にエンジンが止まってしまうレーシングマシンなら仕方ありませんが、そうでないのに冷えているうちから空ぶかしをするのは愚の骨頂です。
  • CO
    一酸化炭素。エンジンに送ったガソリンと空気が混ざって完全燃焼するとCO2が発生しますが、不完全燃焼すると発生するのがCOです。ご存知の通り人体に有害で無色無臭。テスターが無いと濃度を測れません。
    COはエンジンに供給される燃料と空気の混合比を確認するバロメータで、空気が少ないとCO濃度が上昇します。
    HC同様に冷間時は多く排出されます。
    インジェクション車のマフラーに装着されるO2センサーは排気ガス中の酸素濃度を測ることで完全燃焼の具合を検知します。
    CO濃度は、空気が少ないか燃料が多いと濃くなり、空気が多いか燃料が少ないと薄くなります。
  • CO2
    二酸化炭素。濃度が高ければ高いほど完全燃焼しており、人体に無害で理想的な排気ガスです。
    車から排出されるCO2は植物に吸収されるので、環境への害も無いという位置づけで、かつては無公害ガスとされていました。
    「排気ガス規制」を適用されたエンジンはHCやCOの濃度を減らす義務が課されていますが、規制が強化されればされるほど有害ガスの多くが二酸化炭素に変換され、温室効果ガスの排出量が多くなるという矛盾を抱えています。
    高価な排ガステスターではCO2濃度を計測でき、多ければ多いほど調子が良いです。
    ドゥカティでも今時の新車は排ガスの殆どがCO2で、排ガスはストーブよりもクリーンで安全です。
    以前は真冬の車検場で検査を待っている間は排気ガスで暖をとっていました。
  • NOX
    窒素酸化物。「ノックス」と発音します。
    空気の主成分である窒素がエンジン内で高温にさらされて酸素と反応すると発生します。
    人体に有害で、燃料ガスを高温に熱して燃焼させるディーゼルエンジンで多く発生します。
    バイクのエンジンはガソリンをジャブジャブ消費するので、燃焼室内の温度はそれほど高くならないので多くは発生しません。
    多少は排出されていますが車検の対象にはなっていません。

整備する上で気にするべきはHCとCOの濃度です。

排ガス濃度の車検基準

車検証の下の備考欄にあるコメントをみると、「11年排ガス適合」もしくは「19年排ガス適合」と書いてあることがあります。

これが書いていないバイクで古い車種は、車検時の排ガス検査不要です。
これよりも新しい28年ガス規制もあります。そこまでいくとコンピュータ制御や排ガス対策が進歩しているので変な改造をしていなければ排ガス検査は楽に通過できます。通らなければ、ドゥカティならパフォーマンスコンピュータに交換してあるはずです。
メーター起動時に「RACING」などの表示がされて、コンピュータを交換していることが検査官にバレてしまうので排ガス以前に車検を通せません。

 

車検時の排ガス濃度の基準を記載します。

  • 平成11年排ガス規制
    CO→4.5%以下 HC→2000ppm 以下
  • 平成19年排ガス規制
    CO→3.0%以下 HC→1000ppm 以下

エンジンが完全に温まっているときに、排ガス中のCO/HC濃度がこれ以下でなければ車検は通りません。

排ガス濃度を確認する

排ガステスターを使用して計測します。

車検時はマフラー排気口の奥にテスターを差し込んで計測します。
ドゥカティのノーマルマフラーは前後のシリンダーのエキゾーストパイプ根元付近に点検窓があり、キャップボルトを外すことでそれぞれのエンジンから排出される排ガスを計測できます。
エンジンの調子を出すにはシリンダーごとの排ガスのバランスを整え、前後バンクのCO濃度を最適化することが重要です。

基本的に前後バンクのCO濃度は同一にし、前バンクよりも後ろバンクを若干濃いめに調整します。
COが多い=燃料が多いとなりますが、燃料が多いとエンジンを冷やす能力が上がります。
後ろバンクは風が当たりにくく冷えにくいのでCOを増やすことで前後バンクの冷却力を整えることができます。

点検窓のキャップボルトは常に高温にさらされているのでかじりついていることがあります。
一般の方はできるだけ緩めるない方が良いでしょう。プロでさえこのボルトに手出しするのは緊張します。
かじりついているボルトは、緩める前から成否が決まっています。
かじりついていたらテクニックがあってもネジ山は壊れます。緩める際はイチかバチか。
運よく外すことができたらネジ山を清掃しかじり防止グリスを塗布します。

パニガーレV2の前バンクパイプのキャップボルトは確実に焼き付いていて外すことはできません。
調整することも無いのでいたずらに触ることの無いようにして下さい。

排ガス濃度を調整する

(以下、プロ向けの内容なので用語説明は省略します)

ドゥカティでは、電子制御スロットル非搭載車とスクランブラー以外はスロットルボディにエアスクリューがあります。
空冷の多くのスロットルボディはマレリ製で、位置が決まっています。
エア調整するスクリューは、スロットルプーリーとスロットルポジションセンサー近辺にあります。

スクリュー開度に対する感度は非常に敏感で、45°回すだけでCOが0.5%ほど変化します。

水冷の場合は、エアクリーナーボックス側面にあるゴムのキャップを外すと奥にスクリューが見えます。

エアスクリューは、旧式キャブレターやCRスペシャル同様にアイドリングと微開度領域に流入する空気量を調整します。
構造は、スロットルバタフライバルブをバイパスする空気通路の開口面積を増減するようになっています。

このスクリューはアイドリング回転数を調整する役割もあります。

ドゥカティのスロットルバルブの開度ゼロ点(アイドリングポジション)とTPS(スロットルポジションセンサー)は絶対に動かしてはいけません。
万が一TPSを動かしたり自然にずれた場合は自己診断機(ダイアグノーシス)に接続してTPSリセットする必要があるので、ディーラー以外は触ることはできません。
どうしても触る必要がある場合は、事前にTPSのアイドリングポジション時(メインキーOFF)の抵抗値を測定し、調整後に元の位置に戻します。
スロットルボディのバタフライバルブ軸中間部にはキャブレター同様の同調スクリューがあります。
これを調整するとスロットル開度が動いてしまうのでできるだけ触らないようにします。
知らずにスロットルバタフライの開度を調整して調子を元に戻せなくなった場合はディーラーにリセットを依頼しましょう。
アイドリングポジションのスロットルストッパースクリューを触ってしまうと原状復帰は不可能となり、スロットルボディを交換する必要があります。

エアスクリュー開度だけなら、調整前の位置をマーキングしておけば自由に触って大丈夫です。

 

エアスクリューでガス調整するメリット

セッティングがうまく決まると始動性が向上し、街中走行でのガクつきが緩和され調子良くなります。
今回は以下のように調整しました。

車検を一時的に通すだけなら、元の位置をマーキングした上で1回転ほど開けてしまえば楽に通過できます。
ただし、アイドリングが2000rpmくらい上昇するので必ず調子の良い位置に戻してください。

パニガーレ等の電子制御スロットル搭載車はスロットル開度をそれぞれ調整して負圧同調する「BASチューニング」という項目がダイアグノーシスにあります。
O2センサーの制御がしっかり効いてるので排ガス調整は不要です。

空冷でも、90年代以降であればダイアグノーシスでCO調整できます。
そこまでしなくても、気筒ごとにCO濃度を計測しながらエアスクリュー開度を調整するだけで調子を出すことができます。

燃調を調整してもHCが減らない場合はヘッドの圧縮漏れです。
バルブシートの機密不良、クロージングバルブクリアランスが広がっている可能性があります。
現実的な対処方法は、キャブレタークリーナをスロットルバルブ前から噴射してカーボンを除去し、それでもダメならヘッドオーバーホールもしくはクロージングバルブクリアランスを詰めるかオープニングバルブクリアランスを広げます。

バルブクリアランス規定値

以下は、多くの車種に設定されているバルブクリアランスです。

「組立値」とは、バルブシートとバルブフェイスのあたり付けをした直後で、「点検値」とはヘッドオーバーホール無しでカーボン堆積が少ないことが前提の許容範囲です。

「0mm」の解釈は難しいですが、私はカムシャフトの山以外の部分とロッカーアームが微妙に接して、カムシャフトを手で回すと油膜の抵抗を感じるところとしています。
オープン側は広すぎるとバルブタイミングに影響しますが、若干広めが安パイで考え方はコイルスプリングタイプと同様です。
ロッカーアームにはヘアスプリングが装着されており、バルブを強制的に閉じる構造になっています。
ならばクロージング側は多少開いていても良いのでは?と思われますが、そのスプリングは張力が弱く始動やアイドリング時にバルブをしっかり閉じる役割しかありません。

私は、基本的にはヘッドを必要に迫られてオーバーホールしたときしかバルブクリアランス調整はしません。
ご存知の通りデスモドロミックは非常に繊細なので、調子が良いものを下手に触ることはリスクしか無いからです。
やるならバルブフェイスの当たり面のリセットをしてから調整したいところです。
オーナーの要望であれば断る理由はありませんが、ヘッドに手を出すのは吸排気や点火系に問題が無く、それでも調子が出ない時に限定しています。

ディアベルで10kmデスモサービス無しで調子よく走ったバイクを知っています。

 

 

 

 

その他のエンジン回りを点検する

全ての外から見えるボルトが緩んだり脱落していないかチェックします。

特にバッテリーマイナス端子とエンジンを固定している部分の接触部とボルトが錆びると電気系トラブルになるので、バッテリーを外してから接触部を磨いて締め直します。
モンスター796やハイパーモタード系ではアースボルトが前輪後ろあたりにあり、錆びやすく導通不良が起きます。
点検の際はしっかり磨きましょう。

オイルクーラーのホースがエンジンと繋がる部分のナットが緩んでいると走行中に大量のオイルが噴出します。
軽くメガネレンチを当てて緩んでいないかチェックしましょう。
ホースがねじれていたり、空冷でタイミングベルトカバーを外した後はオイルクーラーホースが緩るむことがあるので気を付けましょう。

エンジンとフレームを繋ぐ貫通シャフトの締め付けトルクは60N.mで、工具はKTCの15mmディープソケットを使用します。
モンスター821や1200の貫通しないタイプのマウントボルトは90N.mで、通常の14mmボックスソケットで対応できます。
ボルトが緩いとエンジンがフレームと一体にならずに全体的な剛性が落ち、走行時のフィーリング悪化に繋がります。
貫通しないタイプのマウントボルトは、新車から1000km走ると緩むので確認しましょう。

エンジンのオイル漏れですが、多く場合はオイルフィルター取り付け部から漏れてきます。
一般的にはフィルターは手締めか10N.m前後で締め付けますが、オイル漏れを防ぐならトルクレンチを使用せずにガスケットがしっかり潰れるまで締めきってしまいます。
やりすぎるとフィルター取り付け部のニップルが破損するので気を付けてください。
漏れたあとにフィルターを締めなおすことでも直せます。新品に交換してもあまり解決にはなりません。

エンジンカバーの接触面から漏れてくることもたまにはあります。
ドゥカティはエンジン腰上と冷却水カバー以外の場所ではペーパーガスケットを使わず、液体ガスケットで機密しています。
合わせ面に歪みが無ければ漏れ難いようになっています。
昔、真似してカワサキ車でガスケット抜きで液ガスのみで組んだところ漏れにくくなったことがあります。(カバーとエンジンパーツのクリアランスが変わってくるので真似しないでください。)

 

足回りを点検する

ホイール周りの整備関しては別記事にしていますのでご参考ください。

ドゥカティのフロントタイヤの交換の仕方

ドゥカティのリアタイヤの交換の仕方

倒立フロントフォークのオーバーホール方法

インナーチューブの錆びメンテナンス

タイヤの空気圧は基本的に前後2.2で調整します。
スイングアームに空気圧のラベルがある場合はそれに合わせましょう。

 

トップブリッジのセンターに、ステアリングベアリングにテンションを加えるナットがあります。

特殊工具が必要ですが、このナットの規定トルクは30N.mです。締める時はナット近辺のクランプボルトを緩めます。
このステムナットの締め付け具合でハンドリングが劇的に変わります。
普段の走行でハンドルが切れすぎるような印象があればナットを今より強めに締め、車体の動きが重たい印象があればナットを少し緩めると非常に乗りやすくなります。

この辺りは全てのバイクで共通のテクニックなので、ご自身のバイクで試してみてください。

チェーンを点検する

基本的なチェーンのメンテナンスはこちらをご覧ください。

チェーンの張りを点検する方法

バイクのチェーンのメンテンス

ドゥカティのスイングアームは非常に長く、走行時にチェーンの張りがかなり大きく変動します。
張りすぎるとスイングアームがチェーンで突っ張ってしまい、それ以上動かなくなります。
スイングアームが動かない=リアサスペンションが動かないので、ギャップを拾ったときや2人乗りしたとき、サーキット走行でハイスピードでコーナリングしているときにサスペンションが機能しなくなります。

出来ればバイクを直立させ、地面のアンカーと車体後部を繋いでリアサスペンションをしっかり沈めた状態でチェーンが張りすぎていないか確認しましょう。

スイングアームにチェーン張りの規定値を書いたラベルがあります。
リアサスペンションを縮めた状態で張りを確認できない場合は純正規定値を参考にします。
サイドスタンドでバイクを置き、チェーンが最も張っている位置のときにラベル通りの遊びになるよう張り調整します。
リアサスペンションの動きを優先したいときはそれよりも緩めに調整しても良いでしょう。

緩めにするとチェーンが外れて危険では?と思われるでしょうが、その通りです。
ただ、消耗の少ないチェーンは多少緩めにしても外れることはありません。
逆に言えばドゥカティは常にチェーンの消耗に気を遣う必要があり、片伸びしていれば早めに交換しましょう。

パニガーレV4だけはサスペンションが沈むとチェーンが緩む構造なので、サイドスタンド時に規定値程度に強めに張るようにします。

片持ちスイングアームのチェーンガイド(ゴム製で、チェーンにスイングアームが干渉して削るのを防止する部品)を装着するボルトが高確率で緩んでいます。
点検時には増し締めするか、ボルトを外してロックタイトを塗布しましょう。

リアホイールハブ回りを点検する(片持ち)

916系やモンスターS2R、MH900e等の片持ちスイングアーム車はリアスプロケットハブダンパーに注意します。
画像の赤丸の中にあるダンパーがスイングアーム側に飛び出してチェーン調整する部品と接触してガリガリに傷が入ることがあります。
のちのバイクでは飛び出さないように対策されますが、ストッパーが無いバイクは気を付けてください。
ダンパーは複数個あるので、他のダンパーと比べてはみ出しているの物がある場合は赤信号です。
既にダンパー自体が割れて分割している状態なので、画像に見えるダンパーボルトを締めても意味がありません。
交換が必要です。

また、画像手前のナット(片持ちスイングアームの左側アクスルナット)が緩んでしまうことがあります。
このあたりは販売店によって差があり、とある店でメンテンスを受けているバイクはほとんどが自然に緩んでいる一方、他の店では定期点検でトルクチェックしても緩んでいない場合もあります。
これは単にトルクチェックしているかどうかではなく、別に原因がありそうです。
個人的な予想だと、チェーンを張り過ぎていると走行時にハブをエンジン側に強く引っ張る力が働き、アクスルシャフト(ハブ)の根元に負担がかかってアクスルナットが緩んでいくと想像しています。

以前、ドゥカティを販売した店でお客さんが走行中にこのナットが外れてしまい転倒したという事例を聞きました。
もしかしたら、納車整備した整備士はナットの緩みはちゃんとチェックしていたしチェーンの張りもスイングアームのラベル通りに調整していたのかもしれません。
それでもオーナーの体重が重かったり2人乗りをしたり、チェーンが片伸びをしていて強い力がハブにかかりナットが緩んだのかもしれません。
ただし、ナットが緩んでも脱落防止のクリップが装着されているはずなので脱落はしないようになっています。
果たして真相はわかりませんが、何にしても前後ホイールを支えるボルトやナットの緩みを確認し脱落防止策が施されているタイプのアクスルシャフトはしっかり見極めて、クリップが無ければ装着することが大事です。

シンフォニックホイールボルトの緩み

ABS搭載車のリアブレーキディスクには速度センサー用の小さなホイールが装着されています。
これをドゥカティは「シンフォニックホイール」と呼んでいますが、黒いメッシュ状に肉抜きされた円盤です。
このホイールを装着する小さなボルトが緩んでいることがあり、ボルトが飛び出すとハブ回りの部品や速度センサーを損傷します。
ボルトは2.5mmヘキサゴンレンチを使用します。
トルクチェックをする際は締めすぎてボルト頭を舐めないように気を付けてください。
ネジ山には緩み防止のロックタイトが塗布されています。既に締まっているボルトを動かすとロックタイトの固着が取れて緩みやすくなるので加減をお願いします。

リアハブベアリング

アクスルシャフト(ハブ)を支えるベアリングは大きなローラーベアリングになっていて、スムーズに回転すれば3万km程度ならメンテナンスは不要です。
ベアリングを交換したことは私でも無いですが、損傷した事例も知る限りありません。
スプロケット交換する時は、ついでにハブを分解してグリスアップしましょう。

 

フロントスプロケットを点検する

フロントスプロケットをミッションのシャフトに固定する形式は2つあります。
一つは画像にあるようにM6ボルト2点で固定するタイプ。
もう一つはシャフトのセンターに大きなナットで締め付けるタイプです。

シャフト軸に大きなナットで締め付けるタイプは、マーキングがずれていたり安全ワッシャーが変形していなければ目視チェックのみでOK。
M6ボルト2点留めタイプはワイヤリングされていなければレンチを当てて緩みチェックします。

チェーンを張りすぎるとスプロケットがよじれてナットやボルトが緩みます。
画像のタイプでは、安全プレートの歯の部分が消耗します。
可能であれば点検時は外してプレートの内側の歯の部分に凹みが無いか確認します。できない場合は隙間を覗いて損傷確認します。

この辺りがオイルで汚れていることがありますが、多くはチェーンオイルが飛び散ってエンジン熱で液状化で垂れたものか、クラッチレリーズの穴から漏れ出たエンジンオイルです。
疑わしい場合はスプロケット周りを洗浄してから試乗し、オイルが出てくるか確認して出所を突き止めます。

 

 

 

クラッチレリーズを点検する

クラッチレリーズとはフロントスプロケットの前方にある部品で、油圧クラッチのバイクに装着されています。
スクランブラーやモンスターのワイヤークラッチ車にはありません。
画像のレリーズの下側にある穴の部分からブレーキオイル(フルード)が漏れていないか点検します。
ノーマルクラッチレリーズなら故障することは滅多にありません。

このクラッチレリーズの穴にプッシュロッドという部品が刺さっています。
乾式クラッチでは硬いですが引き抜くと、先端にOリングが二つ付いています。これが硬く平べったくなるとオイル漏れをします。
品番は938232018です。オイル漏れがあれば通販で購入して交換しましょう。

クラッチレリーズを装着する時はエンジン側に強く押し当てておきながら3本のマウントボルト(M6)を均等に少しづつ締め付けます。
面倒でも丁寧に装着しないとロッドとピストンに無理な力がかかって損傷します。

 

油圧系のエア噛みについて

 

クラッチマスターシリンダーがセミラジアルタイプだと、クラッチを切ってもフニャフニャになって切れなくなる症状「エア噛み」が頻発することがあります。

原因はクラッチの回転に伴ってロッドが回り、クラッチレリーズピストンが回転することでエアが油圧回路内に侵入することです。
後に改善されてロッドが回転しないようになりましたが、それでもエア噛みすることがあります。

クラッチレバーを10秒程握るとレバーの重さが無くなる症状はないでしょうか?
左側に転倒するとクラッチマスターの中が傷ついて圧力が逃げてしまうことがあります。
その場合はクラッチマスターの交換になります。

その他、定期的にエア噛みするようならクラッチフルードを交換しましょう。
クラッチ系統内部に侵入した細かい気泡が時間経過で集まって大きな泡となり、クラッチのタッチを悪化しているという説があります。
他にも、油圧ホースの気密が悪くエアが侵入している説もあり、クラッチホースの交換も有効です。

個人的にはクラッチマスターを分解して内部のシールとシリンダーを水で洗浄し、ラバーグリスを塗布して組み直すことで解決できると思っています。(実際に自分のバイクでそうして、しばらく放置してもエア噛みが再発しなくなりました。)
内部のシールは販売していないので再利用になります。参考にする場合は自己責任でお願いします。
ブレーキの開発に携わってから知りましたが、シールとフルードの相性が悪いと気泡が発生することがあるようです。
設計する時はこの材質の選定にも配慮しなくてはいけなのですが、実際に過去にハーレーで気泡発生によるリコールがありました。
ブレンボとしては、油圧系内部に気泡が発生するという認識は無いので、あくまで憶測です。
クラッチやブレーキマスターのエア噛みに悩んでいる人は参考程度にしておいてください。
恐らく、ディーラーやショップに分解整備を依頼してもシール再利用のリスクから断られると思います。

 

マスターシリンダーのダイヤフラムを点検する

ブレーキマスターシリンダーのリザーブタンクのキャップを外すと中にゴムの部品があります。
これはダイヤフラムといって、ジャバラ状のデザインにはブレーキ内で発生する圧力の変動を吸収する役割があります。

外す前にダイヤフラムがタンクの中で広がっていないか確認し、広がっているときは内部で圧力変動があったことになります。
原因は、最後に蓋を開けたあとに気温や気圧が変動したりパッドが消耗したことでしょう。
そのまま放置するとエア噛みの要因になるのでダイヤフラムを水道水で洗ってから乾燥し、元の形に戻してから組み付けます。
シールが破れたり膨張して再装着できないようなら交換します。

フルードがタンクから漏れ出る場合は、多くの場合フルードの入れすぎか定期的なダイヤフラムの清掃をしていないことが原因です。
タンクやキャップの端には切り欠きがあり、ブレーキがオーバーヒートしても圧力を逃がすことができるように空気の通り道があります。
フルードを入れすぎたり、サーキットや高速道路を走って大きな振動が長時間加わると空気穴からフルードが漏れてきます。
安全上仕方ない構造なので、タンクにリストバンドを巻いてフルードの飛び散りを防ぎましょう。

タンクをマスターシリンダーに固定するボルト(M6が一本)は緩みやすいので10N.mで締め付けチェックします。

レバーピンに油をさす

ブレーキとクラッチレバーのピン部分に潤滑油をさすか、外してグリスアップします。
通勤車はピンが錆びて動きが悪くなっていることがあります。

画像ではピンにタイラップを巻いて脱落防止しています。このタイプのピンは下側を特殊なナットで固定してあります。
ナットを強く締めるとレバーの動きが悪くなるほか、ブレーキスイッチの作動に支障が発生することがあるので脱落しない程度に緩く締めなくてはいけません。
その為の脱落防止のタイラップですね。この処理は新車では施されておらず、経験のある整備士による工夫です。
タイラップを巻かなくても適切なトルクであれば脱落はしません。あくまで保険です。

レバーの根元には遊び調整することができる機構がありますが、ディーラー整備士以外は絶対に触ってはいけません。
レバータッチが悪いからといって下手に遊びを詰めると、エアが抜けたりブレーキが過熱したときにパンパンになってブレーキやクラッチが効いたままになってオーバーヒートして事故に至ります。
レバーの隠れた部分の形状は厳密になっており、社外品に交換して僅かでも形状が変わるとトラブルが発生します。
できるだけ純正レバーをお勧めします。

キャリパーを清掃する

ブレンボのキャリパーピストンは錆が発生せず動きが悪くなりにくいです。
対向ピストンのキャリパーはトラブルになることが殆どないので、装着状態で中性洗剤と水で洗うか、エアで掃除するだけでも十分です。
型押しキャリパーはスライドピンが錆びることがあります。
特に通勤車は固着して動かなくなっていることがあるので点検の度にキャリパーを外してピンの清掃とグリスアップをしましょう。

ブレーキに関してはこちらの記事もどうぞ。
ブレーキ鳴きの解決方法と解説

ドゥカティの場合、足回り関連の多くのボルトでネジ山にモリブデングリスを塗布しますが、規定トルクはグリスを塗ったうえでの表記となります。

特にキャリパーボルトはグリスを塗布しないとかじりついてしまうので気をつけてください。
キャリパーの締め付けトルク👇
リアブレーキ(M8)→25N.m
フロントブレーキ(通常マウント)→40N.m
フロントブレーキ(ラジアルマウント)→45N.m

 

サイドスタンドを点検する

 

画像左側のサイドスタンドスイッチを外してサイドスタンドのボルトとナットを締め付けます。
916系のアルミスタンドは締めつけ過ぎるとスタンドの動きが悪くなるので塩梅を調整して下さい。
スタンドが緩んで動きやすくなるとスタンド本体や、支えるブラケットにダメージが入ります。
ブラケットの裏側には亀裂が入ることがあるので点検の際は汚れを落として覗き込み、クラックが入っていないかチェックします。
スタンドに負荷がかかるとブラケットとエンジンを締め付けるマウントボルトが伸びて緩んできます。
点検の際はサイドスタンド周りのボルトの締め付けチェックは重要です。

ドゥカティはサイドスタンドとの戦いを長年続けており、現在に至るまでもスタンドを支えるボルトやブラケットの破損に悩まされています。軽量化と美しいデザインをを追求した構造なので仕方が無いのでしょう。
ただし、パニガーレのスタンドは滅多に緩まず破損も少ないです。跨っていると出しにくいですが優秀なスタンドです。
恐らく車体の軽さやスタンドの角度が影響していると思われます。

終わりに

大まかな点検項目は以上です。
これ以外にも乾式クラッチや電気系や車体、エンジン系でも点検する項目は数多くありますが画像の素材がなかったりテキストが膨大になりすぎるので割愛しました。
特に乾式クラッチのメンテンスは重要なので別の機会に紹介します。

自分自身の点検ノウハウを羅列するだけでもかなりの情報量でした。
実際に作業するときは、これらの項目を次々に進めて一日で完了するので相応のスキルが必要になります。
ドゥカティディーラーでは本記事の内容は最低限で、現場では更に点検項目が多かったり別の見解を持って臨んでいます。
点検はノウハウを持った専門店に依頼する方が良いですが、その分費用も高くなります。
バイクは身を預ける乗り物なのでちゃんとした点検無しで乗るのは危険です。
2年に一度、しっかりとした点検を実施しましょう。
車検の検査自体は陸運支局で30分もあれば完了しますが、点検は一日かけてじっくりと実施するのが正解です。

この記事を読んで下さった方は是非ご自身のバイクでチャレンジして頂き、ドゥカティ勉強中の整備士さんには参考になれば幸いです。
当店に点検を依頼の際はお気軽に以下までご連絡ください。

電話番号:070-4084-1485
メールアドレス:motomechanic2021@gmail.com
所在地:愛知県名古屋市守山区吉根2-3109
モトメカニック 柴田洋平

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この記事を書いている人 - WRITER -
バイク整備士歴13年。 これまでの知識と経験、ノウハウを読者の皆様に公開しています。 バイクに関してお困りの方に少しでもお役に立てれば幸いです。 ぜひプロフィール欄もご覧ください!
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